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副業のインフラエンジニアが”期待以上” 本業の充実した経験があるからこそ、壁打ち相手にも|ナビプラス株式会社様
EC事業者向けに各種ソリューションを提供されているナビプラス株式会社様。システムの”基盤”をなす、インフラを支えるチームにフォーカスし、エンジニアの正社員採用が困難を極める中どのようにリソースを確保して、「重要度は高いが緊急度が低い」後回しになりがちなたくさんのタスクを解消し、インフラの改善につなげていかれたのか、お話を伺いました。
2023.08.02
2021.02.04
副業元年といわれた2018年以降、大企業を中心に社員の副業を原則的に認める動きが出てきています。さらに最近では、社外の人を副業人材として受け入れる企業も増えてきています。また、社員が副業をしたり、副業人材と一緒に仕事をすることで、本人のスキルアップや組織にいい影響が出ているとの声もよく聞くようになりました。
そんな状況の中で特に話題を集めたのが、ヤフー株式会社(以下、ヤフー)のギグパートナー(副業人材)の募集です。
応募総数4,500人超と、世間での関心の高さが窺える結果となりましたが、ヤフー側の本当の狙いはどこにあったのでしょうか。また初のギグパートナー募集で見えてきた課題とはどんなものだったのでしょうか。
今回、ヤフーのギグパートナー推進室長である大森 靖司さんにお話をお聞きしました。
大森 靖司さん
ピープル・デベロップメント統括本部コーポレートPD本部ギグパートナー推進室 室長
ヤフーの採用全般を担当。ギグパートナー施策では立ち上げから実施までを一貫して担当。
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Contents
——そもそもギグパートナー(副業人材)を募集した目的を、改めてお聞かせいただけますでしょうか。
大森 靖司さん(以下、大森):
順を追ってお話しさせていただきますね。まず、弊社では、もともと自社社員による他社での副業を事前申請にて可能としておりました。その根底にある考え方は「職業選択の自由」という法の精神です。
加えて、社員の才能と情熱を解き放つという人事の方針のもと、経験学習サイクルをベースとした人材開発を行なっていますので、社外での経験を通して社員の成長を後押ししたいという思いもあります。
——実際に副業に取り組まれる社員は多いのでしょうか?
大森:
2017年頃から活発化してきた感じですね。
そういった社内状況に加えて、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の防止を目的として、リモートワークの日数無制限化やコアタイムの廃止など働き方の見直しを進めました。
結果、働く場所の自由度が高まったんですね。
通勤はもちろん、細かい部分ではエレベーターを待っていたり、会議室に移動したりといった時間がなくなったことで、これまでより効果的、効率的に働けるようになっています。
となると空いた時間が増えます。もちろん趣味や自己啓発、家族と過ごす時間に充てる人もいますが、その中には副業をしたいと考える人も出てきます。つまり副業をすることへの敷居が下がるというわけです。
——たしかに、時間をつくれなくて副業ができないという人は多いかもしれません。
大森:
そうなんです。ですが時間ができたのはヤフーの社員に限ったことではありません。社外の人にとっても同じことが起きているんじゃないか、副業したい人が一定数いるんじゃないか、と考えたのが、ギグパートナー施策の発端になります。
もともとヤフーではオフィス内にオープンコラボレーションスペースを設けるなどして、社外の人とオープンイノベーションを生み出すための取り組みをやっていましたが、これをオンラインで実現したいという思いもありました。
物理的な移動ができなくなり直接会うのは難しくありましたが、これまで交わることのなかった人たちとも接点が持てるというのは、オンラインならではのメリットだと感じています。
——目的が作業をしてもらうことではなく、オープンイノベーションを生み出すことというのは、とても興味深いです。
大森:
そうですね。作業をお願いするのであれば、アルバイトやクラウドソーシングなどほかにも方法はあります。
でも、せっかくオンラインのみでヤフーという舞台で副業していただけるならば、ヤフーとしてもちろん活躍いただきたいですし、ギグパートナーとして働かれる個人の方も同様だと思うんですよね。
実際、今回の施策に当たって経営陣とも議論した際は、「ギグパートナーには、壁打ち相手やアドバイザーを期待したい」という声が少なからずありました。
——こういう形の副業であれば、いい学びや経験が得られそうですね。ちなみに「副業あるある」なのですが、ギグパートナーの募集について経営陣からの反対はなかったのでしょうか?
大森:
それはまったくありませんでした。当初から「外部の副業人材の受け入れっておもしろそうだね」という前向きな言葉をいただいていました。
一方で、ギグパートナーとして業務委託の方を公募するスキームが社内になく、募集、選考、契約のフローや運用を検討したり、法的な問題にどう向き合うのか、といった点は試行錯誤しながら取り組みましたね。社内の誰もやったことがないですし、外部にも情報が豊富にあるわけではない状態でしたから。
副業募集をされている企業さまは少ないながらもいらっしゃるのですが、副業・人材系支援サービスのお力を頼らずに自社だけで募集するというのは本当に事例が少なかったですね。私自身も副業についてはほとんど知見がない状態でしたので、情報収集しながら取り組んできました。
——社員の採用とは違うものですからね。
大森:
そのとおりです。業務委託なので、そもそも「採用」ではなくて「契約」ですし、募集でも社員採用と間違えないように注意を促すということを徹底的にやりました。
——選考基準のようなものはあったのでしょうか。
大森:
「この方なら」をどう見極めるのかという点も、やりながら探していった、という感じです。
——最終的に、ベストな選考方法は見つかったのでしょうか。
大森:
いろいろ試してみて、うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともあります。今回の経験を踏まえて、次をどうするかと考えている段階です。まずはしっかり振り返りを行いたいと考えています。
——今回初めてギグパートナーの方々を受け入れてみて、何か課題として感じられていることはありますでしょうか。
大森:
はい、たくさんありますね。
まずは、いざ契約の時点で「本業の会社で副業の許可が取れなかった」というケースがいくつかありました。
ほかにも、例えば、セキュリティの問題があります。
ヤフーの中の情報を流出させないというのはもちろんなのですが、ギグパートナーが本業の会社で勤めているからこそ得られた情報を伝えてしまうというのも問題です。
良かれと思って話してくださることもあるのかもしれませんが、そういった法的リスクをどうやって防ぐかも、募集時・契約時などに注意しながら進めましたね。
社会全体として「副業の場面でこれはやっちゃいけない」とか、「副業する際にこれは気を付けて臨まなきゃいけない」といったコンセンサスはまだまだとれていないと考えていて、社内の法務やリスク管理を司る部署と相談しながら慎重に進めています。
——現時点では副業を許可している会社も副業人材も受け入れている会社も少数派なので、こういった課題が社会問題として出てくるのはまだ先のことかもしれませんね。ほかに難しいと感じていることはありますか?
大森:
ギグパートナーにどんな業務をお任せするのか。言い換えれば、業務の切り出し方、任せ方ですね。これはどの会社でも悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、私たちも切り出し方や任せ方は手探りです。事実、今回複数の部署で受入を行っていますが、人数、お任せする内容、協働の仕方、コミュニケーションの仕方などはそれぞれごとに異なっていますからね。 そのなかで、うまくいった部分もあれば、上手くいかなかった部分もあります。今後に向けては、それらの良いとこどりをしながら、「こういうお任せの仕方がいい」、「こういう感じでキックオフをすると良さそう」「こういう業務は親和性がありそう」といった知見を型にしていきたいと考えています。
——まだ施策の途中ではありますが、ギグパートナーを受け入れたことで何か変化やメリットは感じていますか?
大森:
いくつかのポジションで最初のギグパートナー契約期間が終わった、という段で、まだ結論のようなものは出ていませんが「こういう感じで社外の力を借りて、パートナーとしてやっていくのっていいよね」といった反応が集まりつつあります。
やはり、通常では出会えない人と一緒に仕事ができたり、その分野の専門家と壁打ちができるという機会は貴重なようで、その価値は実際に受入れた部門長が感じていたりしますね。目に見えない価値なので、なかなか説明するのが難しいのですが、これが一番だと考えています。
各論でいうと、業務委託という形で契約できることでヤフーにとっては、機動的・合理的にお力を借りることができますし、それが個人の方にとって新しい経験につながるのであれば、双方にとっていいことだと考えています。
——クリアするべき課題はあるけれども、全体としていい結果が得られたんですね。最後にお聞きしたいのですが、今後もギグパートナーの施策は続けていくのでしょうか。
大森:
今回の施策は、考えながら走ったという状態で、まずはきちんと振り返りをしたいですね。
そのうえで、手応えを感じた部分もあるなかで、どう継続していくと良いか。また副業に限らず、オンライン、リモートなどの新しい働き方が当たり前になっていく中で、ヤフーとしてどう社外の人材と向き合うか、を考えるのが重要だと思っています。
今後も、いろいろ出てくる課題や声に耳を傾けながら、さまざまな新しい働き方にトライしていきたいですね。
——大森さん、本日はありがとうございました!