プロダクト開発チームは2年間で10倍!急成長「食べチョク」のビビッドガーデンが採用する組織戦略とは?|イベントレポート

「生産者の”こだわり”が、正当に評価される世界へ」

一次産業の活性化に貢献する「食べチョク」の提供を開始して5年。流通額は直近2年間で約128倍増、生産者の契約実績は7,500軒超という成長を遂げている、注目のスタートアップ株式会社ビビッドガーデン様。

サービスの急成長の一方で、プロダクトを支える開発チームもこの2年間で4人から40人規模へと大きく拡大しました。エンジニア人材の採用では、競争が高まり難易度が上がっている現在、スピード成長を実現させた組織戦略とはどのようなものなのか、株式会社ビビッドガーデン エンジニアリングマネージャー 平野俊輔様にお話を伺いました。


この記事はシューマツワーカー主催カスタマー企業向けイベント「“副業エンジニア”を巻き込んだチームビルディング〜急成長スタートアップはエンジニア不足をいかに解消したのか〜」(2022年2月25日開催)のイベントレポート(抜粋)です。

「食べチョク」事業スタートと同時に開発に参画。
事業成長と組織づくりの現在地

ーーまずは、自己紹介をお願いいたします。

「食べチョク」というサービスを開発・提供している、株式会社ビビッドガーデン エンジニアリングマネージャーの平野俊輔です。

新卒で株式会社ディー・エヌ・エーにWebエンジニアとして入社し、モバゲー決済の開発責任者を経験した後にマンガボックスのフロントエンド開発や採用業務に従事しました。ビビッドガーデンには、2018年7月に正社員として入社したのですが、それ以前から副業という形で関わっていました。

ビビッドガーデン代表の秋元がDeNA時代の同期だったことがきっかけなのですが、副業としてのスタートでした。ビビッドガーデンで「食べチョク」を開発したところ、自分のプロダクトが誰かの課題を解決出来ているという実感を得られる仕事をしたら楽しいだろうなと思って入社を決めた、という経緯があります。

その時(2018年当時)は会社としては2年目で、私自身は3人目のエンジニアでした。
私自身はコードを書くのは好きではあるのですが、自分一人でコードを書くというよりも、コードを書く仲間を増やした方が会社やプロダクトの成長が早いのではないかと思うようになり、少しずつ、採用活動へのコミットを増やしていきました。メンバーが増えてきたきたところで、組織としてどんなチーム体制でやれば良いか、どんな人を採用すれば良いかなど、組織開発に力を入れ始めました。今はいわゆるエンジニアリングマネージャーの役割を担っています。

ーーその後、ここ数年での「食べチョク」の事業成長は著しいのではないでしょうか。

はい。ビビッドガーデンのことを、ここで少しお伝えさせていただきますと。
私たちはミッションとして、「生産者の”こだわり”が、正当に評価される世界へ」を掲げています。
今日、一次生産の方々がコロナ禍などもあり大変な状況の中ではありますが、それでも、色鮮やかな農地や海などを次世代に残し、持続可能な一次産業にしていきたいなという思いがあり、農作物の作り方や漁の方法などにこだわりを持っている方々が、きちんと利益を得られるような、そんな世界を目指していきたいなと思ってる会社です。

そんな私たちの作っているメインのプロダクトが「食べチョク」です。

従来の農作物の生産というのは、生産者が市場に農作物を卸し、われわれ消費者はそれをスーパーなどで手にすることができる、というモデルの中で生産・販売をされていました。このルートでは、手間がかからず簡単に卸せるというメリットがある一方で、販売価格の決定権は生産者になく、生産者に入る利益も30-50%程度。そうなると、たくさん作ってたくさん売るというシステム、つまり大規模生産じゃないとなかなか儲かりにくいのです。

しかし、味などにこだわりを持って生産されている中小規模の生産者さんもいます。

中小規模の生産者さんは、量ではなく質で勝負という戦い方になるわけです。ちょっと高い値段でも、頑張っていい物を作っているので売っていきたい。が、今度は問題は売る場所がなかなか見つからない。

そこで食べチョクが提供しているのは、農畜水産物を販売できるサービスです。一般消費者の集まる、オンライン上の直売所のようなプラットフォームをつくっており、生産者さん側は自分で価格を決定し、販売できます。

少数しか生産できないこだわりの生産物でも、「食べチョク」があれば持続可能な形で生産し続けられる。一次産業の販路における課題において「食べチョク」がひとつの選択肢になったらいいなという思いでプロダクトを作っています

ーー2020年以降はコロナ禍で外食産業・食品業界に影響が大きく、一次産業も大変な状況でした。

はい、生産者の方にとって販売面でも変動の大きな状況となりました。新しい販売ルートとしての「食べチョク」が、その中でお役に立てた面は大きかったかもしれません。

「食べチョク」は2年で流通額で約128倍、生産者の方々の数もこの2年で10倍となりました。こちらの資料には5,800軒と書いてありますが、2022年8月時点では7.500軒を超えており、多くの生産者の力になれると良いなと思っています。

副業・業務委託メンバーが過半数。
それでも「ワンチームであること」にこだわる

ーー流通額128倍の事業成長。これを支える開発体制はどうなっていますか。

開発チームのメンバー数は、2年前に4名だったのが現在では業務委託も含め40名となっています。

ーー2年間で新たに36名のメンバーがチームに加わった。これはエンジニア人材の採用難の中で、なかなか実現の難しいことではないかと思います。

そこは、副業・業務委託のメンバーを迎えながらチームづくりをしていったからかと思います。と同時に、さまざまな雇用形態で働くメンバーがいる前提でも、開発チームがワンチームとして成長していくこと、一体感を持って開発を進めていくことにもこだわりながらやってきました。

現在のチーム構成について、内訳で言いますと、副業・業務委託メンバーは16名です。「副業」というと定義がフワッとしてしまうので、ここでは稼働時間で分類をさせていただきます。
一番多いボリュームゾーンでいいますと、週32〜40時間の方、日数で言うと週4日以上の方と、あとは週に1日程度、平日の夜や土日に少しなど、そういった方々がボリュームゾーンとしては多いという形にはなっています。

チーム内の副業・業務委託メンバーの雰囲気としては、

「サービスに関わる他チームのメンバーが生産者様を巡ってお話を聞くことになったので、一緒に連れて行ってもらうことにしました!」

と副業・業務委託メンバーから自発的な報告があったり。本当に“自走”して動いていただいています。それからこちら。

「食べチョク」のトップページのコードなのですが、大きく「食べチョク」と書かれていて。メンバーのサービスへの遊び心と愛着を感じるわけですが、知らぬ間にこれがバズったりしていました。開発の現場ののびやかな雰囲気というか、一体感のようなところを感じていただけるエピソードかなと思います。

ーーのびのびと楽しそうな雰囲気が伝わります。

最近も、「ビビットガーデンは本当に良いスケールアップをしていて凄さを感じております」と、副業・業務委託メンバーから言われました。そう言われると嬉しいなと思いつつ、一体感を持って一緒に仕事ができているので、そこも嬉しいなと思いながらやっている状況です。

ーー「本当に良いスケールアップ」その通りですね。

はい。こういった形で、我々は約1/3を副業・業務委託メンバーに担っていただいています

ですがもちろん、ここまでくるためにはいろいろな工夫や施策もありました。
業務委託、副業やフリーランスなど様々な形態ではあるのですが、そういった方々を我々がどのように巻き込んで、開発チームとして所謂ワンチームになってきたかを、今日はここから、私自身も振り返りながらお話をさせていただきます。何かしら皆様にとって有意義なものになれば良いなと思っています。あらためまして、よろしくお願いいたします。

サービス提供の“速度”を落とさないことが最重要!
そのためのチーム体制について

チームづくりにおいて、はじめに重要なのは採用です。

その前提として、当社の開発体制とその変遷をご紹介します。我々の開発体制ですが、ザクっと、2021年を境に基本的な開発体制・開発姿勢が変わりました。

2020年いっぱいまでは「アウトプット重視時代」です。
サービスとしてもまだまだ立ち上がったばかりで、我々はECプラットフォーム(商品を出品する人と購入する人が集まってくるサイト)なのですが、ECプラットフォームとして重要な機能がまだまだ足りていないという状況でした。

逆にいうと「これはないとおかしいでしょう」というようなところがたくさんあったので、それをいかに早くリリースするかというのが重要で、またその仕様というのも、ビジネスメンバーから降ってきたものを作るという訳ではなく、プロダクトチームの中で走りながら仕様を考えて開発する、というような体制をとっていました。

2021年からは、「アウトカム重視時代」と呼んでいます。
プロダクトの機能が段々と揃ってきて、それと同時にユーザー数も増えてきました。

この頃からは「とりあえず機能を作って出す」という進め方はやめました。我々が作った機能が一体どれくらいのお客様にしっかりと価値として届いているのか。新しい機能を作った結果としてどういった成果が上がっているのか。成果をKPIに落とし込み、数字を見ながらやっていきましょうとなりました。「求められているものを探求しながら作る」という体制です。と同時に、早くリリースするという点は変わりません

ーーこうした開発体制で進める中で、採用面ではどうでしたか。

採用したいエンジニアは、「要件や仕様を考え決めながら開発できる」「そこに集中できるように基盤を保てる」どちらかをできる方を採用したいなと、ずっと思っていました。

というのも「アウトプット時代」も「アウトカム時代」も、エンジニアが何を作るか考えながら開発をしている、という部分は共通しているんですね。そして、要件や仕様を考えながら機能開発や新規開発を行っていると疎かになりがちですが、基盤作りも、新規開発に必要で忘れてはいけない部分です。例えば我々が使用している言語であるRubyのバージョンアップなど。これら両面を、速度を上げながらやっていきたいと。

ただ、正社員の採用となると課題に直面しました。具体的には時間軸が合わないことです。

事業ではユーザー数が爆発的に伸びて、このタイミングで「来週には入って欲しい!」というような状況。一方で正社員採用となると、まず人材をさがすところから時間がかかります。良い人にスカウトしたり何度も面談して内定したとしても、内定が決まってから入社まで時間がかかったりですとか。

ちょうど5人目のエンジニアを採用するタイミングがそうした状況でした。事業のスピードは落とせない、正社員採用を待つ時間はない。そんな中で採用した選択肢が、副業・業務委託メンバーにチームに加わってもらうことです。「来週には入ってほしい!」を実現するために、シューマツワーカーや他のエージェントの方々にお声がけした背景がありました。

「正社員の基準より厳しいかもしれない」副業メンバーの人材要件

先ほどお話しした「何を作るかを考えながら作れるエンジニア」や、「そこの開発に集中できるよう基盤を保つ開発が出来るエンジニア」を採用したいと考えたとき、では具体的にはどのような人材要件を定義するのか、これは重要だと思います。

こちらは実際に人材要件(当社では「採用基準」と記載しています)を書いて、エージェントさんやシューマツワーカーさんにお渡ししていたものを切って貼ったものです。

ここに「サービスリードエンジニア」「スペシャリストエンジニア」と記載があります。「サービスリードエンジニア」は先ほどでいう「何を作るかを考えながら作れるエンジニア」で、もう一つの「スペシャリストエンジニア」は「そこの開発に集中できるよう基盤を保つ開発が出来るエンジニア」を担っていただけるエンジニアというのを想定していました。

どんな開発をしてほしいかを2種類に分け、いずれのパターンでやっていただくかを前提とした上で、次に、稼働時間や具体的なエンジニア像を考えています。

「サービスリードエンジニア」に関してはコードを書くというだけではなく、他のメンバーと議論しながら、ユーザーがどのような体験を求めているかなど、そういったことが時間としては大切になってくるので、週4日くらい稼働してほしいなと考えます。

「スペシャリストエンジニア」であれば、基盤を保つであったりRubyのバージョンアップをするであったり、ある程度の定石があるのでそれを着実にこなしていただける方、週2〜3日でもOKで、かつ言語・開発に秀でている方という具体像が見えてきます。

こういった2つの求める業務委託のエンジニア像をイメージして人材要件を作りました。

それプラスになりますが、「マインドセット」というものもあります。
当時我々もエンジニアが人数としては少なかった状況で、副業・業務委託メンバーに作業を切り出して準備して「ここからここまでやってください、お願いします」といったやり方は、正直工数としてできない状況でした。なのでチームで一緒に作業するというのが前提で、そういった働き方をお願いできる方を前提に考えていました。

「言われた仕事はやります。とりあえずコードをかければOKです」といった方だと辛いな、ということも思いながら探していて、かつ「転職も視野に入っていると尚良い」といったエージェントの方泣かせの要件も作っていました。

結果としては、正社員の採用基準とほぼ一致というか、むしろ厳しいといった基準で副業・業務委託メンバーを探していきました。

3ヶ月で3人の副業メンバーがチームに参画。
成功のためには、人材要件定義こそ手を抜かない

ーー具体的に初期のメンバー集めはいかがでしたか。

結果的には、シューマツワーカーさんに見つけていただきまして、3ヶ月で3人ほど契約させていただきました。私の肌感としましては、正社員の方と基準は同じであっても、流動性が高いので比較的見つけやすい印象はありました。

一方で、新しく加わっていただいた副業・業務委託メンバーの方に、パフォーマンスを発揮し、できれば長く働いていただけるようにするにはどうすれば良いか。お互いのマッチングの精度を高めるために、我々受け入れ側が意識すべき観点はいくつかあります。

例えば、サービスの上流の部分、そもそも何を作るかからやっていきたいなという副業・業務委託メンバーに対して、「もうやることは決まっているのでコードを書いてください」といったことや、逆も然りで、コードを書ければ良いという人に、「仕様が決まってないので仕様から考えてください」というような感じだと、なんか違うなとミスマッチに繋がってしまう可能性があります。

そのためミスマッチを防ぐためには、人材要件をしっかりと定義しておくことが一番大切だと考えています。

ーー副業メンバーの受け入れを組織的に可能にすることで、「組織戦略」の幅を広げ、ここまでのスピード感ある成長を遂げてこられたということですね。副業人材の活用を始めようとされている企業様や、副業で企業に関わり始めようとされているワーカーの方に向けて、一言いただけますでしょうか。

私は採用という側面からプロダクト開発に関わってきて、そこから現在は組織開発をやってきています。

その中で、正直私自身の中では、正社員メンバー・副業・業務委託メンバーといった区分けは明確にはないんです。業務委託の方でも、働き方はフリーランスがいいけれども、仕事の仕方はわりと裁量を持ってやっていきたいという方もおられます。そういう方にはぜひやっていただきたいですし、むしろそれでプロダクトが前に進むのであれば我々としてもその方にとってもプラスだと思います。

人によっては「週3はエンジニア、週2は全く別の仕事」という生き方を選んでおられる方もいます。さまざまな生き方をリスペクトしつつ、会社としても受け入れつつ、お互いにWin-Winな仕事ができれば良いと思っています。そんなプロダクトの作り方、サービス開発の仕方を今後も私としても試していきたいと思っています。

ーーありがとうございました!


「食べチョク」事業が爆発的に成長する中で、開発組織の成長戦略として「副業人材の活用」という選択肢を採用されたビビッドガーデン様。正社員・副業メンバー・業務委託メンバーなど、多様な雇用形態と働き方を受け入れる一方で、あくまで“ワンチームとしての成長”を模索されてきました。

シューマツワーカーでは、組織戦略としての副業人材の活用を応援しています。人材要件のご相談からお気軽に、まずはお問合せください!

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