【採用トレンド最前線】最重要ターゲットは「潜在層」。タッチポイント作りから訴求まで攻めの心を持った採用人事活動とは

※本記事はBtoB一括見積もりサービス「アイミツ」を運営している株式会社ユニラボと日本最大級の副業マッチングサービス「シューマツワーカー」を運営している株式会社シューマツワーカーの共催ウェビナーのレポートです。

コロナ禍前後で、採用市場はどう変わったのか?昨今の採用市場でのトレンドとは、どんなものなのか?オンライン対談で、株式会社シューマツワーカー代表の松村が、エンジニア採用のプロ、「採用モンスター」こと鴛海氏に伺いました。

登壇者

株式会社採用モンスター 代表取締役社長 鴛海敬子(おしうみけいこ)

人事歴10年、前職では年間68名のエンジニア採用を実現。一般的な採用単価100~150万円のところ、採用単価39,725円を実現。枠にはまらない採用手法で採用成功に導いた経験からついたあだ名は採用モンスター。その後、2019年7月に退社、独立。独立を宣言した記事は一晩で1万3000PVを超え、60社近い企業から問い合わせが殺到。2019年10月、HRのスキルシェアを推進する、副業人事と人事で困っている企業を繋ぐプラットフォーム事業を行う株式会社採用モンスターズを創業。フジテレビ「プライムニュース」、日テレ「お願いランキング」などメディア出演多数。「モチベーションアワード賞」「GOOD ACTION賞」などHR分野での受賞歴多数。

オンライン採用のコツ – 面接は準備が9割。当日までの情報量とアレンジが当日の時間の質を決める

--早速ですが、コロナ禍でオンライン面談が主流になって、採用の上手な企業さんはどんな工夫をされていらっしゃるのでしょうか?

鴛海氏)面談の時間までに、どれだけ情報提供の質をあげるかについて、各社さん工夫をされていらっしゃいますね。たとえば面接官のプロフィールや、会社紹介コンテンツは事前送付しておくとか、そういった工夫によって限られた面談の時間の質をアップさせることもできますし、ドタキャン率も下がります。なかにはオフィスにお越しいただくことが難しいなかでも少しでも空気感を伝えたいとのことで、フロア全体の動画を全部撮ってYoutubeにあげていらっしゃる会社さんもいます。また、オンライン面談のいいところを活用して、最後の10分に現場の先輩社員との時間を設けたりだとか、リアルと違ってアレンジがしやすい状況を逆手にとって面談のクオリティをあげている会社さんもあります。

--どこの企業さんも活躍してくれるエンジニアがほしいと思うのですが、面談時にその見極め方など、鴛海さん独自の観点などがあるのでしょうか?

鴛海氏)優秀の定義にもよりますが、自社にフィットするか見ている企業様が多いですね。ミスマッチを減らすためには、スキルだけで取るのではなく、社風や会社の価値観、事業内容になど、とにかく具体的にうちの会社はこうだという情報を多く与えることが必要です。また、求める人材に対しての「優秀」の定義を明確にし、それを見るための質問を三つくらい用意しておくと良いと思います。例えば学習意欲を測りたいのか、PM経験があってPLを見れるような上の立場で仕事ができることなのか、またPMといってもしっかりと規模の確認をするとか、ですね。2人のPMというのと10人のPMというのは、全く違ってくる話なので。また面接では、基本的に未来のことを聞くより、過去を深く掘り下げて来た方がズレがないと思っています。特に資質や価値観に関しては、判断する質問を事前に準備することをおすすめしています。漠然と「優秀」というよりも、「自社に合う人かどうか」見れることが大切なので。

スクール卒未経験エンジニアでも、ポートフォリオや試験でポテンシャルの見極めは可能

--エンジニアスクール卒の実務未経験者の見極めなどは、どうされていらっしゃるのでしょうか?

鴛海氏)キャッチアップ力と資質を確かめるために、2〜3ヶ月集中的に勉強すれば取れる資格を課題に出して、取得できたら採用候補に上げる、といった手法を使ったりされていますね。「取ったら採用」と確約するのではなく、「お話ししていて可能性があると感じているので、一つの能力証明としてその資格を取ったら改めて面接をさせていただきたい」とお伝えする流れで。「頑張ります!」というのはみんなできますが、本当に頑張れる人か、企業としては事実が欲しいので。

鴛海氏)また、「実務に即したポートフォリオをちゃんと作ってきているか」というのも見ているところです。例えば自社で開発している管理画面と丸々同じものを作りましたってポートフォリオを見せられたら、「即戦力になりそう!」と思いますよね。なので、いかに実務的なポートフォリオを作ってきているのかも採用基準です。その反対でいうと、趣味によったものだけでポートフォリオを作って、「ツイッターみたいなもの作りました!」って言われても、「いや、そんなサービスうちやってないし・・・」ってなりますので。一般的には管理画面をしっかり作られると高評価ですし、狙いたい企業のビジネスニーズに沿ったアウトプットがあることがいいですね。

--それだと採用のリードタイムは長い印象ですが、そのあたりはいかがでしょうか。

鴛海氏)潜在層とのタッチポイントからの入社という形への刈り取りにある程度時間がかかるのは止むを得ないですね。未経験者の見極めという点では、資格以外にも適性検査を入れることもありますよ。クラウドで簡単に受験できるテストセンターのようなもので、何点以上だったら、などですね。

これからは「転職意識顕在層」ではない「潜在層」とのタッチポイントをどれだけ増やせるかがカギ

--コロナ禍以前と比べ、働き方として刺さるワードみたいなものは、変わったりしたのでしょうか?

鴛海氏)リモートワークOKというのは、以前は差別化できるワードだったのですが、今ではもはや当たり前なので、それだけでは刺さらなくなった、というのはありますね。また来社しての魅力づけが難しいので、採用広報に力を入れていないと差別化が難しい状況だとも

感じます。一般に「このワードをいったら刺さる」というものはないので、自社の魅力をしっかりと認識し、意識的に採用広報のワードに載せていかないと、選ばれづらくはなってきていると感じます。

--鴛海さんは、一人に採用100万程度かかると言われているエンジニア採用を前職時代に4万円以下で採用していた実績がありますが、自社に合うエンジニアを費用を抑えて採用するコツみたいなものはあるのでしょうか?

鴛海氏)コロナ禍以前だったので、会社が企画運営する「エンジニアコミュニティ」を作ってタッチポイントを増やした、というのが大きな施策でした。技術勉強会を開催するとか、オフィスを土日に解放して勉強会をする、とかですね。エンジニアからしたら、「どっちにしろどこかで勉強したいし、それならあそこのオフィス借りちゃえ、お菓子も出るし」みたいな感じで参加してくれていました。技術勉強会も、最初は10人くらいしか集まらなかったですが、やってるうちに40〜50人集まるようになって、そこからキャリア相談がちらほら来たりしたことが、圧倒的に採用コストを下げた採用に繋がりました。イベントの類いで1番ハードルが低いのは、もくもく会だと思いますね。

--リアルのもくもく会が難しくなってからは、どのようにオンラインに移行されたのでしょうか?

鴛海氏)オンラインで初めましての人と信頼関係を気づくにはファシリテーション力が必要になるので、勉強会であれば最初に目標設定とかをシェアして、報告をする時間をもうけるとか、途中休憩でおしゃべりタイムを入れるとか、slackにチャンネルを作って呼び込んだりとか、そういう仕掛けが必要ですね。手間はかかるけど成果は出るので、しっかり手間をかけることがおすすめです。他にある最近のトレンドは、Clubhouseでのエンジニアのキャリア相談とかですね。すぐに成果が出るかというと難しいんですけど、やっていないと出遅れる状態です。

潜在層にアピールするっていうのと、接点は全部チャンスだと思うことが必要なんですね。待ちの姿勢でもいい人が来るとか、選んでやろうって時代ではないので、人事には、営業のように攻めていく気持ちと、種まきからの刈り取りをする意識が求められます。今は媒体に登録しなくても転職できる時代になってきているので、転職活動をしていない潜在層に対するタッチポイントを作るということが、エンジニアの採用に対しては必須になってくると思っています。

「副業人材を受け入れる」のも潜在層とのタッチポイントを増やす方法

鴛海氏)また、副業人材を受け入れるというのも、自社と関わりのある人材プールを増やす方法の一つだと思います。試してみて社風があったら本格的に来なよ、というイメージですね。優秀な人の転職市場価値はコロナ以前も今も変わらないので、フルタイムの社員としての採用にこだわっているとリソースの確保が難しい状態で、特にスタートアップ界隈で副業社員エンジニアをチームに加える流れが増えてる印象です。エンジニアは、優秀な人ほどどんどんフリーランスになっていくという流れがあるので。でもその一方で、フリーランスの限界やPMのキャリアを開拓するというような別の活路を探して正社員に戻っていくフリーランスも一定いるんですよ。なので、「採用媒体に載せておけば」とか、「エージェントに頼んでおくだけ」という考えでは一歩も二歩も出遅れていて、これからの人事は潜在層のエンジニアとのタッチポイントを積極的に作りに行き、またそのタッチポイントを最大限に活用していく姿勢が大事ですね。

それから、今は社員がSNSひとつで世界とすぐ繋がれる時代というところを人事としては十分に活用したいところです。社内の活躍している人で目立たせてアピールするのも、事業や社風で打ち出していくのでもいいと思うのですが、自分たちをどう見せてどう発信していくか、採用市場においてはかつてないほど草の根の戦略が効いてくる時代だと思っています。「攻めの人事の心」を持って自社採用力を高めることが必要な時代ですね。

(text : Rina Uehara)

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