1,100人以上の人事が登録するOne HRの共同代表が考える、これからの採用人事に求められる責任と覚悟とは?

生き生きと働くフリーランスに感化され自身も副業を開始

松村幸弥(以下、松村):島崎さん、本日はよろしくお願いいたします!島崎さんとはフリーランス協会の活動でもよくご一緒させていただいてますよね。まずは、簡単に自己紹介をお願いいたします。

 

島崎由真(以下、島崎):島崎由真(しまさき・ゆうま)と申します。「One HR」というHR企業や企業人事を束ねる有志団体で共同代表をしています。

本業では、エッセンス株式会社の専門的スキルを持ったフリーランス人材と企業をマッチングさせるプロパートナー事業部でマネージャーをしています。

 

松村:僕の知る限り、島崎さんってめちゃくちゃ働いてる印象です(笑)。One HRでは、どのような活動を行っているのでしょうか。

 

島崎:設立は2017年でして、主に人材系企業の社員と一般企業の人事担当者が中心となり、これからのHR(ヒューマンリソース)のあるべき姿を考えるイベントやワークショップを定期的に開催していますね。

 

松村:島崎さんが、正社員としてバリバリ仕事をしながらも、副業をするようになった理由はなんでしょうか?

 

島崎:きっかけはふたつあります。ひとつは、フリーランスの方々と日々接しているうちに、自分の得意を活かして生き生きと働いている姿に感化されたからです。自分も彼らのようになるには、今やっていることの延長線上では到底難しい。もっと自分の名前を使い、会社外でも活動していくことが重要だと思ったんです。

もうひとつは、大企業で働いている若手有志が集まる「ONE JAPAN」という会の活動をニュースで見たことです。若手社員が集まって、今後の日本のあるべき姿や大企業の未来を考えるという熱量のある内容でした。このニュースを見て、「自分は大企業に勤めていないけれど、そんな自分でも何か行動に起こすとしたらなんだろう」と考えたとき、自分の専門領域であるHRだと思ったんです。それがOne HRを立ち上げたきっかけです。

 

松村:なるほど。いまOne HRには、何人くらい登録者がいるんですか?

 

島崎:事務局メンバーが40名ほどで、Facebookグループに参加していただいている方が1100名弱います。

 

松村: 1100人はすごいですね! よく人事の方とお会いする機会があるのですが、彼らから先進的な採用方法を取り入れたいという話をよく聞きます。副業社員の採用もその枠組みの一つだと思うのですが、One HRの登録者の中で、副業社員を採用している企業の方はどれくらいいるのでしょうか。

 

島崎:感覚としては1〜2割くらいで、多くはないですね。採用におけるKPIは、採用計画に沿ってどれだけ優秀な人を正社員で採用できたかが主になります。そうすると、副業社員やフリーランスの採用は彼らの評価にはつながらないことも多く、結果として「副業社員を採用しよう!」という発想にはなりにくいのです。

個人的には、彼らにも副業という働き方を積極的に採用してほしいのですが、まだ時間がかかりそうな印象です。

 

松村:しかし昨今の採用環境だと、正社員でエンジニアを始めとしたIT人材を、なおかつ優秀な方を採用するのはなかなか難しいですよね。

 

島崎:そうですね。エッセンスに4年以上勤めているのですが、「今すぐにはフリーランスや副業社員の方はいりません」という企業の声はよく聞きます。ただ、課題をヒアリングしていると「スキルや経験のある人材にすぐ来てほしい!」という話になるんですよ。それこそ、「正社員ではなくフリーランスや副業社員の方が御社に“ハマり”ますよ」と説明させていただいています。

今後、日本の労働人口が減少していく中で、人材獲得はより一層難しくなります。だから、企業の採用人事担当者は、正社員にこだわらない採用形態の選択肢や、人材リソース確保のチャネルをいくつも持っていた方がいいと思います。

 

松村:まったく同感です。シューマツワーカーに登録している方には副業やフリーランスで働きたいという人がたくさんいるのですが、彼らを受け入れる企業がまだまだ少ないのが課題となっています。逆に言えば、競合企業より早く優秀な彼らのリソース確保にふみこめるチャンスとも言えますよね!

主語を“会社”でなく“自分”にすること

島崎:いろいろな採用人事担当者の方に話を聞くと、目標を達成できてない方も少なくありません。その状態で、経営者や上司に外部人材を活用しようと提案しても、「まずは正社員採用をがんばってほしい」と言われてしまうようで。採用人事担当者がフリーランスや副業社員を採用したいと思っていたとしても、自分が主語なら積極的に検討できるけど、“会社”が主語になったら躊躇してしまいます。

そこでプロパートナーズではそういった採用人事担当者に対して、彼らが活用しやすい職種、つまりは“採用・人事”のフリーランスをまず紹介しています。例えば、エンジニア採用で困っているなら、エンジニア採用のプロを活用することを提案しています。採用計画から戦略設計、媒体選定やスカウト文面作成までもプロが行います。それで採用ができたら、フリーランス自体への実績もできますので、他部署へ展開しやすくなるのです。

 

松村:新たな文化を根付かせるには、小さな成功体験をコツコツ重ねていくのがとても大事ですよね。

目の前のKPIより、将来を見据えた採用を

松村:最後のテーマなのですが、採用・人事担当者は今後どういったことを意識していくべきだと思いますか?

 

島崎:ふたつあります。ひとつは、企業と個人が長期的なビジョンを持つこと。やはり、年間のKPIを追ってしまいがちですが、5年後や10年後の採用市場と組織のあるべき姿を見定めて、必要な人材リソースを獲得していくことが必要だと思っています。 また組織だけでなく、自身が個人としてもどうあるべきかビジョンを持ち、また社内メンバーにもその必要性を啓発していくことが重要だと思います。

ふたつ目は、出会った人とリレーションをきちんと築くこと。たとえ今すぐの採用にいたらなかったとしても、いずれまた採用する機会が来るかもしれない。正社員としての採用だけでなく、副業として将来関わる可能性だってあります。そのためにも適切なリレーションを築くことが必要です。SNSでつながって、投稿に「いいね」するなど、ほんのささいなことでもいいんですよ。

間もなく、日程調整や書類審査などはAIに取って代わられる時代がきます。そうなった時に、採用人事担当者として、どういう価値を出せるのかを今から考えて区必要があると思います。そして、それはそのまま私たち人材エージェントにも言えることだと感じています。

 

松村:なるほど。ちなみにもう少しヒントが欲しいのですが、例えばどのような価値が採用人事担当者として求められてくると思いますか?

 

島崎:個人的には、採用人事担当者が最終面接するくらいの覚悟と責任を持たないといけないと思ってます。そのためには、誰よりも会社の事業課題・組織課題について理解する必要があります。

会社にとって本当に必要な人材だと判断したならば、契約形態に限らず、フリーランスだろうが副業社員だろうが、社長や事業部長に対して「この人を絶対とるべきです!」と強く説得できるくらいがいいと思っています。そういう採用人事担当者をひとりでも多くOne HRでも発掘して光を当てていきたいですね。

 

松村:それは是非、お願いします(笑)。島崎さん、本日はありがとうございました!!

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