“採用で業績貢献する”というミッションにおいて、『雇用形態』にこだわる必要性はない

エンジニアの働く選択肢を増やすために起業を決意

松村幸弥(以下、松村):小澤さん、ご無沙汰してます! 今回はお忙しい中お時間いただき本当にありがとうございます。まずは、自己紹介をお願いいたします!

 

小澤政生(以下、小澤):松村さんお久しぶりです! 株式会社TechBowlの小澤と申します。2010年に株式会社サイバーエージェントに入社し、営業経験を経た後に、採用を7年間やっていました。新卒採用責任者として、のべ約15,000人の候補者の方とお話させていただき、総合職からエンジニアまで年間約200名の採用に携わらせていただきました。

加えて、エンジニアの評価や人事施策を考える技術政策室も兼務し、採用だけでなく、評価や育成、マーケット情報の分析や制度設計も担当していました。その後、2018年の10月に起業し株式会社TechBowlを設立しました。

 

松村:僕が初めてご挨拶させていただいたときは、まだサイバーエージェントさんにいましたよね。仕事が順調ななか、起業に踏み切った背景を教えてください。

 

小澤:採用担当として会社に必要なエンジニアを採用することは、とてもやりがいがあったし、採用の仕事は天職だったんですけど、7年もやってるとさすがにやりきったという気持ちがありまして(笑)。次第に、1社の採用をやるよりも、候補者ひとりひとりのキャリアに興味が強くなり、彼らの働く選択肢をもっと増やせないかなー、と考えることが増えました。で、やるなら1回自分でやってみたいと思って勢いで決めました。今は、TechBowlという会社をやってて、プロのエンジニアを目指す30歳以下を対象にした技術教育と就職支援を展開しています。

企業がエンジニアに求める能力が多様化してきている

 松村:この7年間で採用市場は大きく変化しましたよね。長年、採用の最前線でいらっしゃる小澤さんの目にはどう映っていますか?

 

小澤:ますます売り手市場になってきましたね。テクノロジーを絡めた事業が拡大しており、エンジニアを採用してこなかった会社もどんどんエンジニア採用に参入し始めています。今やITエンジニアの有効求人倍率は約8倍。1人のエンジニア候補者に8社がこぞってラブコールを送っているような状況です。

また、企業が求める「エンジニア」も多様化、細分化してきているように感じます。モノを創ることができるれエンジニア、AIの設計、開発ができるエンジニア、Excelと何時間も闘ってたのをボタン一つで解決してくれるエンジニアなど、“すごいことできる人=エンジニア”と言いがちですが、その種類や役割はますます多種多様になってきているので、「どういうエンジニアが自社に必要なのか」、企業側に人材要件や定義を明確に候補者に伝える力がないと、いい採用ができないと思います。、

あとは、通年採用、自社にマッチした人材をプールする、という流れが徐々に強まってきていますね。就活年次になってから接触しても正直もう遅いですね。いかに早いうちに動機づけして、継続的に会いながら会社の魅力を伝え、候補者のことを深く理解できるか。いつでも入口があり、何回でもチャレンジできる、新卒中途に関わらずそういう風に門戸を大きく、長く開ける企業が増えているような気がします。出戻り社員の採用施策や受け入れ制度も充実してきていますよね。

企業が副業社員も“仲間”という認識で受け入れられるかどうか

 

松村:多様化した結果、採用すべきエンジニアの人数も増えてきてしまうと、求めるスキルを持っているエンジニアを正社員で必要な人数採用するのはさらに難しくなりますよね。

 

小澤:そうですね。正社員になるとハードルが一気に上がりますね。一方で、副業社員として採用する手段も増えてきていますよね。企業とエンジニアの双方共に、良い意味で「お試し」ができるので、メリットはとても大きい選択肢になります。まあ、御社はそういうサービスやってるんで一番詳しいですよね(笑)。

 

松村:ありがとうございます(笑)。しかし、都内の企業だけで見ても、まだそこに踏み切れてない企業の方が多いのも現状ですよね。

 

小澤:企業のカルチャーにもよりますよね。新卒の正社員をイチから育てる企業や、入社してからの「3年目で●●の資格をとって、8年目で■■の実習を受けて」というロールモデルとかキャリアパスが決まっている企業などは、副業社員という発想自体があまりないと思います。

反対に、多様な働き方を求める労働者や候補者に対して、ポジティブサイドもネガティブサイドもフラットに比較・判断し、副業社員を採用している企業も昔に比べるとかなり増えてきました。働き方改革も追い風にはなっていますよね。

 

松村:シューマツワーカーのクライアントさんもそういった企業さんが多いですね。実は、副業社員でも他の正社員と同じように仲間だという意識を持ってもらえることも少なくありません。

 

小澤:就職・転職マーケットにおいて、採用担当は”いい採用をする。とにかく人数目標達成!”となりがちですが、採用の本当の目的は“採用で業績貢献する”ということです。これはサイバーで何度もすり込まれた考え方ですが、今でも本当にそうだなと思います。”業績貢献に繋がる採用”ということだけを突き詰めてみると、必ずしも雇用形態にこだわらなくてもいいと思います。

企業の課題を解決してくれる人材を、必要な時に必要な分だけ確保することが本質だと思います。もちろん会社の「資産」という考え方で見ると正社員というのも大事ですが、そこと同じくらい事業の成長スピードを意識することも大事な訳で。かゆい所に手が届く人にすぐ会う、すぐやってもらう、役割がまた来たらお願いする、みたいな関係性を沢山持っている会社は強いですよね。

副業社員を受け入れる為には、社内の環境整備やディレクション力が必要で、それなりのエネルギーを要します。TechBowlでも副業メンターが多数所属していますが、企業によってルールも様々で非常に勉強になりますね。

TechBowlのメンターは全員副業社員

松村:TechBowlさんでも副業社員を採用しているんですよね?

 

小澤:そうですね。弊社はエンジニアを目指す30歳以下の人たちに対し、現役のエンジニアが副業で教えていくというかたちなので、メンターは全員副業社員です。70名ほどのメンターがいますが、フリーランスは3〜4名ぐらいで、それ以外はメガベンチャーやスタートアップで働く現役エンジニアです。

 

松村:いいですね! そんなにたくさんの副業社員を活用している企業は、今はまだそうないと思います。ちなみに、彼らのモチベーションは何になるのでしょうか?

 

小澤:弊社からのお支払いしている報酬は、彼らのスキルからすると正直、雀の涙ほどなのですが(笑)、彼らにとって3つメリットがあると思っています。

 

1つ目は、自分が日々の業務で使用している最新技術をそのままメンティーに教えられるので、得意な技術を教えられること。2つ目は、メンターコミュニティにさまざまな会社のエンジニアがいるので横のつながりが作れること。3つ目は、エンジニア業界で有名な方に彼らのメンターになっていただいているので、、彼ら自身の成長にもつながっていることです。先日メルカリの名村さんがTechBowlの技術顧問になってくださり、メンターとの月イチ懇親会でも近い距離でいろんな話をしてくださってます。僕らは副業で手伝ってくれているメンターたちに、コミュニティによる価値提供をしているのです。

 

松村:まさに“TechBowl”ですね。

 

小澤:そうですね(笑)。ありがとうございます。

メインの仕事が複数になる時代が来る

松村:最後に、5年後の採用市場は、どうなっていると思いますか?

 

小澤:5年後かわかりませんが、いずれ“副業”自体がもう一段昇格して、複数の会社で正社員のような働き方をするのが当たり前になると思います。たとえば、月水金はA社で火木はB社という働き方ですね。自分の持っているスキルを、複数のサービスやプロジェクトで発揮できるというイメージです。そこがメイン、とかではなく、どっちもメインになる。エンジニアとか制作サイドの場合は開発進捗にボラが出たりするのでそこは課題になりそうですが、そこをクリアできればありえそうだなと思います。働き方改革の次のステップを歩んでる気がします。

 

松村:そうですね。例えば、好きなことをやるのがA社だとすると、B社は収入の安定源?スキル成長?など、どういう役割にするんだろうと考えたり、キャリアを考える上でも副業が重要なファクターになってくると思います。

 

小澤:そうですよね。企業もそういうところを理解して副業社員を受け入れてくれる環境ができるといいですよね。こういう業務は、こういうモチベーションの人に任せようとか、技術と同じでモチベーションという面も業務とフィットしていければいいですよね。

 

松村:まったくその通りですね。小澤さんがTechBowlで培った副業社員の知見をどんどん発信して、是非今後ともこの働き方を一緒に広めていって欲しいです。本日は、お忙しい中本当にありがとうございました!

お知らせ

「株式会社TechBowl、次世代エンジニアの登竜門イベント「HackBowl」を初開催。全国各地の次世代エンジニアを集め、現役ITプロエンジニア達と一緒にハッカソン」


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000040741.html

 

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