“採用ターゲット”の設定方法とは?ペルソナ作成から母集団形成までの手順

「優秀な人材がなかなか集まらない」

採用担当者として日々奮闘する中で、このような悩みを抱えていらっしゃる方は少なくないのではないでしょうか。求人広告を出しても応募が集まらない、面接を重ねても「この人だ」という確信が持てない——こうした採用活動の課題の根本には、採用ターゲットの設定が曖昧であることが原因であるケースが多いと言われています。

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果」によると、入職率(企業が新しく人材を採用する割合)は15.4%で、前年から0.8ポイント上昇しており(*1)、企業の採用活動は依然として活発です。しかし一方で、離職率も12.1%と高い水準を保っており、採用してもすぐに離職してしまうという「ミスマッチ」が企業の大きな課題となっています。

*1 (典拠)厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/index.html

本記事では、こうした採用課題を解決するための第一歩として、採用ターゲットの適切な設定方法について解説します。「ペルソナ」作成の具体的な手順から、効果的な母集団形成の戦略まで、実践的な内容をお届けします。

採用ターゲットがあいまいだと陥りやすい課題とは

「優秀な人材がほしい」「即戦力を採用したい」——このような抽象的であいまいな採用要件で採用活動を行なってしまうと、このような課題に直面しやすくなります。

  • 課題① 応募者の質が安定しない
    • 求人票に記載する内容が曖昧だと、企業が求めているスキルセットとは異なる人材からの応募が増えてしまいます。結果として、書類選考や面接にかかる工数が増大し、採用活動の効率が大幅に低下します。
  • 課題② 面接官によって評価基準がバラバラになる
    • 「この候補者は採用すべきか」という判断が面接官の主観に左右され、評価にブレが生じます。ある面接官は「コミュニケーション能力が高い」と評価しても、別の面接官は「専門性が不足している」と判断するなど、統一された基準がないままでは、適切な採用判断ができません
  • 問題③ 入社後のミスマッチが発生する
    • 採用した人材が「思っていた人と違った」「期待した成果が出ない」といった状況に陥り、早期離職につながってしまいます。これは企業にとっても個人にとっても、大きな損失となります。

明確な採用ターゲット設定がもたらすメリット

一方、採用ターゲットを明確に設定することで、採用活動全体の精度が向上し、以下のようなメリットもあります!

  • メリット① 求める人材に情報が届きやすくなる
    • 求人票やスカウトメッセージの内容が具体的になり、ターゲット人材の目に留まりやすくなります。また、自社とのマッチ度が高い人材からの応募が増えるため、選考プロセスの効率も向上します。
  • メリット② 選考基準が統一され、判断の精度が上がる
    • 面接官全員が同じ基準で候補者を評価できるようになり、「誰を採用すべきか」の判断がブレにくくなります。これにより、本当に必要な人材を見極める確率が高まります。
  • メリット③ 入社後のミスマッチを防ぎ、定着率が向上する
    • 事前に双方の期待値をすり合わせることで、入社後に「こんなはずではなかった」という事態を防ぐことができます。結果として、早期離職が減少し、長期的に活躍する人材の確保につながります。
  • メリット④ 採用コストの削減につながる
    • ミスマッチによる早期離職が減ることで、再度の採用活動にかかるコストを削減できます。また、選考プロセスの効率化により、採用担当者の工数も大幅に削減されます。

では、「採用ターゲット」の明確化はどのように進めていけば良いでしょうか?
デザインやマーケティングの手法で、「ペルソナ」というターゲット像の明確化により、デザインの方向性やマーケティング施策の判断基準を作る手法があります。

採用においても、この「ペルソナ」の設定が役に立ちます

採用ペルソナの設定ステップ① 募集ポジションの業務内容を明確化

採用ペルソナを作成する前に、まず「このポジションでは具体的にどのような業務を担当してもらうのか」を明確にする必要があります。

具体化すべきポイント

  • ・日常的に行う業務内容 (週次・月次などの頻度も含めて)
  • ・使用するツールやシステム
  • ・関わる社内外の関係者
  • ・期待する成果や目標
  • ・将来的に任せたい業務の範囲

例えば、「マーケティング担当者」を募集する場合でも、BtoBかBtoCか、デジタルマーケティング中心か広報も含むのか、既存施策の運用が中心か新規施策の企画立案まで求めるのかによって、必要なスキルセットは大きく異なります

業務内容を具体的に洗い出すことで、「どのような経験やスキルを持った人材が必要か」が自然と見えてきます。

採用ペルソナの設定ステップ② 必須スキルと歓迎スキルを整理

業務内容が明確になったら、次に求めるスキルを「Must(必須)」「Want(歓迎)」「Better(あれば尚良い)」の3段階に分類します。

  • Must(必須条件)
    • 業務を遂行する上で絶対に必要なスキルや経験です。この条件を満たしていない場合は、どれだけ他の要素が優れていても採用を見送るべき項目です。
    • 例:「Webマーケティング実務経験3年以上」「SQLを使ったデータ抽出ができる」「BtoBの法人営業経験」
  • Want(歓迎条件)
    • あれば望ましいが、なくても入社後の研修や他のメンバーのサポートでカバーできる項目です。
    • 例:「マネジメント経験」「業界知識」「特定のツールの使用経験」
  • Better(あれば尚良い)
    • 直接的には必須ではないが、持っていると業務がよりスムーズに進む項目です。
    • 例:「スタートアップでの就業経験」「英語でのコミュニケーション能力」

この整理を行うことで、採用要件に優先順位がつき、「どこまでは譲れないのか」「どこは柔軟に判断できるのか」が明確になります。

採用ペルソナの設定ステップ③ 価値観・カルチャーフィットの定義

スキルや経験だけでなく、自社の文化や価値観にフィットする人材かどうかも、長期的な活躍には欠かせない要素です。

定義すべきポイント

  • ・自社が大切にしている価値観  (例:スピード感、顧客第一主義、チャレンジ精神)
  • ・組織の働き方の特徴  (例:フラットな意思決定、リモートワーク中心、少数精鋭)
  • ・求める人物像  (例:主体性がある、チームワークを重視する、データに基づいて判断する)

注意すべきなのは、「理想的な企業文化」ではなく「現実の企業文化」を正直に伝えることです。実際の職場環境と採用時のメッセージにギャップがあると、入社後のミスマッチにつながります。

現場で実際に活躍している社員にヒアリングし、「どのような価値観を持った人が成果を出しているか」「どのようなコミュニケーションスタイルの人がチームに馴染んでいるか」を具体的に把握することが重要です。

採用ペルソナの設定ステップ④ ペルソナの作成

ここまでの情報を統合し、具体的な「ペルソナ」として人物像を描きます。ペルソナは、実在する一人の人物をイメージできるレベルまで具体化することがポイントです。

ペルソナに含めるべき要素

  • ・年齢・性別 (あくまで参考値として)
  • ・現在の職種・業界
  • ・これまでのキャリアパス
  • ・保有しているスキル・経験
  • ・仕事に対する価値観
  • ・転職を考える理由・動機
  • ・プライベートの状況 (家族構成、居住地など、業務に関連する範囲で)

例えば、「32歳、男性、大手IT企業でWebマーケティング担当として5年間勤務。SEO・Web広告運用・アクセス解析が得意。スピード感を持って新しい施策にチャレンジできる環境を求めて転職を検討中。都内在住、既婚」といった具合です。

このようにペルソナを具体化することで、採用チーム全体で「どのような人材を探しているのか」のイメージを共有しやすくなります。

採用ペルソナの設定ステップ⑤ 現場の声を聞き、精度を高める

作成したペルソナが実態に即しているか、現場の社員にヒアリングしてフィードバックをもらいましょう

ヒアリングすべき内容

  • ・実際の業務で本当に必要なスキルは何か
  • ・どのような人が活躍しているか
  • ・逆に、どのような人が苦戦しているか
  • ・現場が求める人材像と、作成したペルソナにズレはないか

現場の声を反映することで、ペルソナの精度が高まり、より実践的な採用活動が可能になります!

効果的に母集団形成をするための基本戦略を立てる!

採用ペルソナが明確になったら、次はその人材にどうやってアプローチするか——つまり「母集団形成」の戦略を考えます。母集団とは、自社の採用候補者となりうる人材のプールのことです。質の高い母集団を形成できれば、採用成功の確率は大きく高まります

戦略① ターゲットに合わせた採用チャネルの選定

採用チャネルには、求人媒体、人材紹介、リファラル採用、ダイレクトリクルーティング、SNS採用など、さまざまな選択肢があります。重要なのは、ペルソナに合わせて最適なチャネルを選ぶことです。

例えば、若手のエンジニアを採用したい場合は、WantedlyやGreenといったIT人材に特化した媒体や、GitHubなどのエンジニアコミュニティでのアプローチが効果的です。一方、経営層に近いポジションであれば、エグゼクティブサーチを専門とする人材紹介会社の活用が適しているかもしれません。

戦略② 自社の魅力を明確に言語化する

応募者は複数の企業を比較検討しています。その中で自社を選んでもらうためには、「この会社で働く魅力」を明確に伝える必要があります。

魅力の言語化では、以下のような要素を整理しましょう。

  • ・事業のビジョンやミッション
  • ・提供する製品・サービスの独自性
  • ・組織の雰囲気や働き方の特徴
  • ・キャリアアップの機会
  • ・待遇・福利厚生

重要なのは、単に「良いこと」を並べるのではなく、ペルソナが重視するポイントに焦点を当てることです。例えば、成長志向の強い人材には「裁量権の大きさ」や「新規事業へのチャレンジ機会」を、ワークライフバランスを重視する人材には「フレックスタイム制度」や「リモートワーク環境」を訴求します。

戦略③ 段階的なコミュニケーション設計

いきなり「応募してください」ではなく、段階的に関係を構築していくアプローチも効果的です。

  • ・まずは会社説明会やカジュアル面談で接点を持つ
  • ・SNSやオウンドメディアで日常的に情報発信し、認知度を高める
  • ・イベントやセミナーを開催し、潜在的な候補者と接点を作る

特にスタートアップや中小企業の場合、知名度が低いことが採用のハードルになりがちです。こうした企業こそ、段階的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが重要です。

母集団の「量」と「質」のバランスを保つための継続的な改善を

母集団形成では、「量」と「質」のバランスが重要です。

応募者数が多ければ良いというわけではありません。ミスマッチな応募者が大量に集まっても、選考工数が増えるだけで採用成功にはつながりません。一方で、質を重視しすぎて母集団が極端に少なくなると、選択肢が限られ、妥協した採用につながるリスクがあります。

理想的なのは、ペルソナに近い人材が一定数集まる状態です。そのためには、求人票の書き方、スカウトメッセージの内容、採用ブランディングなど、あらゆる接点でターゲット人材に響くメッセージを発信することが求められます。

また、母集団形成の効果を高めるには、データに基づいた継続的な改善が不可欠です。

測定すべき指標

  • ・各チャネルからの応募数
  • ・応募から書類選考通過率
  • ・面接実施率
  • ・内定承諾率
  • ・チャネル別の採用単価

これらの指標を定期的にモニタリングし、「どのチャネルが費用対効果が高いか」「どのメッセージが候補者に響いているか」を分析します。効果の低いチャネルには予算を削減し、効果の高いチャネルには予算を集中投下するなど、柔軟に戦略を調整していくことが重要です。

「ペルソナ」の活用だけで解決しない課題をどうするか?

ここまで、正社員採用を前提とした採用ターゲット設定と母集団形成について解説してきました。ペルソナ設定をすることで、応募段階から内定まで、ミスマッチを減らし改善を進める上での成果を上げることができるでしょう。

しかし、実際の採用プロセスにおいては、限られた面接時間の中で「この人は自社に合うか」を判断しなければなりません。しかし実際には、一緒に働いてみないと分からないことも多いのが、現実です。

そこで近年、採用戦略の選択肢として注目されているのが、副業や業務委託を採用プロセスに活用することです。

従来の正社員採用では、副業や業務委託という形態であれば、まずは短期間のプロジェクトで一緒に働き、相性やスキルを確認した上で正社員化を検討することができます。これにより、採用ミスマッチのリスクを大幅に軽減できます。

副業や業務委託という働き方を採用プロセスに取り入れると、以下のようなメリットもあります。

  • メリット① 「お試し期間」として機能する
    • 3〜6ヶ月程度のプロジェクトで実際に業務を依頼し、その成果と働きぶりを見て正社員化を判断できます。企業側は候補者のスキルレベル、コミュニケーション能力、企業文化への適応力を実際に確認でき、候補者側も企業の方針、チーム環境、業務の進め方を体験できます。
  • メリット② 採用コストの削減
    • 人材紹介会社への高額な成功報酬(年収の30〜35%)を支払うことなく、優秀な人材と出会うことができます。また、ミスマッチが発生した場合でも、正社員と比較して契約の見直しがしやすいため、リスクを抑えられます。
  • メリット③ 転職市場に現れない優秀な人材との接点
    • 副業市場には、現在の職場に満足しているものの、新しいチャレンジや副収入を求める優秀な人材が多数存在します。大手企業で実績を積んだ現役社員など、通常の転職市場では出会えない人材層にアプローチできる可能性があります。
  • メリット④ 業務の性質に応じた柔軟な人材配置
    • すべての業務が正社員雇用に適しているわけではありません。プロジェクトベースで発生する業務、専門性が高く社内育成が困難な業務などは、副業人材や業務委託を活用することで、コストパフォーマンスも品質も高められます。

段階的なアプローチの実践例

副業・業務委託人材を活用した採用アプローチは、以下のようなステップで進めることができます。

  1. 1. 特定プロジェクトでの業務委託契約(3〜6ヶ月)
    • まずは小規模なプロジェクトで協働し、相性を確認
    • 双方が「一緒に働きたい」と感じるかを見極める
  2. 2. 継続的な業務委託への移行
    • プロジェクトがうまくいけば、継続的な業務委託として関係を深化
    • より大きな責任や裁量を持ってもらう
  3. 3. 正社員化の打診と移行
    • 双方の信頼関係が構築され、長期的な協働を望む場合に正社員化を検討
    • すでに業務内容や企業文化を理解しているため、スムーズに移行できる

このアプローチにより、従来の採用プロセスでは得られなかった「実際に一緒に働いてみる」という経験を通じて、より確実な採用判断が可能になります。

採用成功のカギは「明確なターゲット設定」と「柔軟な戦略」

本記事では、採用ターゲットの設定方法について、ペルソナ作成から母集団形成までの手順を解説してきました。

採用活動の成功は、「どのような人材が必要か」を明確にすることから始まります。曖昧な採用要件では、どれだけ時間とコストをかけても、本当に必要な人材には届きません

一方で、採用ターゲットを明確に設定することで、求人メッセージの訴求力が高まり、ターゲット人材からの応募が増えます。選考基準が統一され、採用判断の精度も向上します。そして何より、入社後のミスマッチが減少し、長期的に活躍する人材の確保につながります。

さらに、従来の正社員採用だけでなく、副業・業務委託を活用した段階的なアプローチも、採用戦略の選択肢として有効です。「まずは一緒に働いてみる」ことで、採用ミスマッチのリスクを大幅に軽減できます。

人材不足が深刻化する今だからこそ、採用ターゲットを明確にし、柔軟な採用戦略を構築することが、企業の成長を支える重要な鍵となるでしょう。

あなたの企業でも、まずは小さなプロジェクトから、新しい採用アプローチを試してみませんか。採用活動の新しい可能性が、そこから開けるかもしれません!

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