働き方が多様化する時代における“性格のいい会社”とは

“性格のいい会社”になるために

松村幸弥(以下、松村):佐藤さんと初めてお会いしたのは京都で行われたカンファレンスでしたよね。佐藤さんの著書『いい人材が集まる、性格のいい会社』を読んで、佐藤さんが考えるこれからの求められる組織の在り方などを伺いたいと思っています! まずは自己紹介をお願いできますでしょうか。

 

佐藤雄佑(以下、佐藤):ミライフで代表を務めている佐藤雄佑と申します。新卒ではベルシステム24へ入社しマーケティングを担当していました。その後、「仕事においてやっぱり最後は“人”だ!」と思い、リクルートエイブリック(現、リクルートキャリア)へ転職。法人営業・支社長、エグゼクティブコンサルタントなどを経験し、リクルートホールディングス体制の構築時には、人事GMとして、リクルートグループの分社・統合のプロジェクトを推進してきました。

その後2016年に独立、株式会社ミライフを設立し現在に至ります。ミライフでは、転職・キャリア相談をはじめ、人事コンサル事業やマネジメント、キャリア教育を中心とした講演会も行なっています。

2017年に『いい人材が集まる、性格のいい会社』という本を出版しました。

 

松村:ありがとうございます。“性格のいい会社”という言葉選びがおもしろいですよね。なぜこのテーマで本を出そうと思ったのでしょうか?

 

佐藤:新橋で会社の文句を言っているサラリーマンたちを見て、「仕事をつまらなそうにしていてもったいないな」と思ったんです。しかしよく考えてみると、今の日本って会社に満足している人より、愚痴を言っている人のほうが圧倒的に多いんですよね。だから、自分が人材業界で感じたことや経験したことを通して、“今の会社を選んで良かった”と思える人を少しでも増やしたいと思ったのです。

 

松村:人生において、仕事は多くの割合を占めますしね。また企業にとっても採用は、企業成長のもっとも重要なファクターの1つです。昨今は、採用の多様化や採用広報などの考え方も浸透しており、転職者からすると転職がどんどん複雑化していますよね、いい意味でも悪い意味でも。

 

佐藤:その通りです。しかし採用広報といっても、会社自体に真に魅力がなければ、広報をがんばっても発信している内容は“嘘”になってしまいます。

 

松村:魅力がなければ、採用できたとしてもすぐに辞められてしまいますしね。

 

佐藤:そうなんです。だから最近、リファラル採用やダイレクトリクルーティングといった新しい採用の方法が登場していますが、それが成功するために重要な要因はひとつしかないと思っていて、それは、“社員が自分の会社を好き”であるかどうかです。

自分の会社のことを好きな人は友だちに紹介しますが、会社を好きではなく近いうちに辞めようと思っているなら、絶対に紹介はしないですよね。だから“性格のいい会社”というのは、「福利厚生がいい」とか「給与が高い」などではなく、個人が成長できたり、仲間を尊敬できたり、働き方が柔軟だったりといった働く環境の良さのことを言います。

キャリアの意味の変化

松村;佐藤さんは、長年、人事採用の分野で活躍されていますが、採用は昔と比べてどのように変化していますか?

 

佐藤:ここ3年くらいで痛烈に感じていることは、大手企業で働いている人がどんどん辞めていることです。転職が当たり前の時代ではありますが、誰もが知っている大手商社や自動車メーカー、大手コンサル企業でも辞める人が出てきました。

背景としては、大手企業の場合、キャリアは会社依存になってしまうことが挙げられます。やはり大手というのは、自社の中でしか通用しない人脈や特殊なシステム、つまり“企業内特殊能力”を蓄えていく傾向があるので、社会全体で見た時にキャリアに汎用性がないんですよね。

だから自分のキャリアを考えたとき、給料が低くなってでも、成長ややりがい、働く環境などを考えてスタートアップへ転職したり、起業する人が増えてきました。

 

松村:確かに、大企業からスタートアップへ参画する人は珍しくなくなりましたよね。

 

佐藤:今でも、有名大学の学生の多くは、新卒で大手企業への入社を志望します。スタートアップ企業に興味があっても、「まずは大手に就職しておくか」という意見はまだまだ多いですね。しかし彼らは結局、入社して3年ほどで辞めてしまうんですよね。

 

松村:なるほど。実は新卒で既に副業を考えている人は増えているんですよね。自分のキャリアを考える上で、本業を辞めずにキャリアを形成する副業という選択肢は、大手企業に就職した向上心のある若手社員にとって魅力的です。とはいえ、大手企業の人が副業するパターンって、実は現状ほとんどないのです。

 

佐藤:副業禁止の会社もまだまだ多いですしね。

 

松村:そうですね。それに、副業を始めたいものの、「何をしたらいいかわからない」という人が多いのです。なぜなら、自分ができること(スキル)をうまく言語化できないからです。

キャリアは、「どの企業で働くか」よりも「どのスキルを身に着けるか」で会社を選ぶ必要があります。自分のスキルを言語化できてやっと、副業ができるようになるのです。

  

佐藤:大手企業にも良いところはもちろんありますが、スタートアップ企業の場合は、若いうちからいろいろと任せてもらえるので、必然的にスキルや経験値は上がっていきますよね。

 

副業の観点からの“性格のいい会社”

松村:副業という観点において、“性格のいい会社”になるために企業はどうすれば良いとお考えでしょうか?

 

佐藤:社員の副業を容認することと、副業社員を受け入れること、両方に柔軟にならないといけないと思っています。

前者の場合、副業OKにすることで、優秀な人が残ってくれたり、成長してくれたり、人脈形成に繋がったり良い循環が生まれます。社員の副業を禁止している企業はまだまだ多いですが、副業を解禁して、囲い込み政策のようにしてしまうのはもったいないです。

一方、副業社員の受入れは、企業が副業社員を活用するノウハウさえあればうまくワークすると思うんです。

 

松村:そうですね。実際は、どういう業務を副業社員に切り出せるのかわからない企業がまだまだ多いですね。実際に副業社員を採用したものの、うまくワークしない場合も少なくありません。

また副業の場合、リモートで働くことが多いため、企業によってはコミュニケーションの時間のズレも懸念にあげられます。ただ最近はフレックスの会社が増えてきましたので、平日のお昼でも副業できる企業で働いている副業社員を採用すれば、うまくワークすることができます。

 

佐藤:大手企業の場合、どのようなニーズから副業人材が求められているのですか?

 

松村:「一部のエンジニアリング業務やマーケティング業務、デザイン業務をアウトソースしたい」や、「新規事業をやりたいけど、知見のある人がいないから紹介してほしい」というケースが多いですね。

 

佐藤:「BPOとしての副業社員活用」と「プロフェッショナルとしての副業社員活用」ということですね。

 

松村:そうですね。どちらにしても企業は明確に「このスキルと経験を持つ人が欲しい」と明示してきます。大手企業で副業するにせよ、スタートアップで副業するにせよ、やはり自身のスキルを言語化できるようになるのが重要だということになります。

しかしこれは、多くの日本人にとってはなかなか新しい感覚になりますね。

 

佐藤:なるほど。副業を始める前に、まずは自身のスキルを身につけることに時間を使ってもいいかもしれないですね。

 

松村:その通りだと思います。佐藤さん、本日はありがとうございました!!

 

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