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厚生労働省が副業・兼業を認める形でモデル就業規則を改定した2018年から2年以上が経ちましたが、まだまだ副業・兼業を認めている企業は多数派ではありません。
そんな中で全面的に社員の副業を認め、バックアップしているのがヤフー株式会社(以下、ヤフー)です。1996年から副業を許可しております。そこでヤフーで10年以上活躍しながら、副業でパラレルに働いている名島さんにお話をお伺いしました。
【今回のインタビュイー】
名島 若菜さん/ ヤフー株式会社 COO O2O事業統括本部集客ソリューション部 プランナー。2009年にヤフーへ入社。新規事業開発や広報、PRの部署を経て現職。2019年から副業を開始し、これまでに4社以上で支援を行っている。
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——早速ですが、これまでのご経歴や今のお仕事について教えていただけますか?
名島若菜さん(以下、名島):
はい。ヤフーに入社後、最初にトラベル事業に携わりました。その後コマース領域の事業開発、広報・PRを経て、現在はO2O(オンライン・トゥー・オフライン)というホットな領域に関わらせていただいています。O2Oという言葉はあまり聞き慣れないかもしれないのですが、たとえば実店舗に送客するなどの新しいマーケティングソリューションを新規開発する部門でビジネス企画を担当しています。
——こんなにいろいろチャレンジさせてもらえるんですね。
名島:
そうですね。非連続成長を常に目指している会社なので。新規事業に携わることが比較的多かったのですが最初は数名で始めたプロジェクトが数年で数百人規模の事業になるといった成長に関わらせていただいたこともありました。本当に毎年まったく違う新しいチャレンジをさせてもらっていて、飽きることなくあっという間に10年が経っていたという感じです。
何か新しいことをするとなると転職をするしかないケースもあるのかもしれませんが、ヤフーでは社内のさまざまな部署やグループ会社への異動といった選択肢に加え副業も容認されていますので、挑戦や成長する機会は十分すぎるくらいにあると思います。
——ヤフーでは10年以上も前から副業を許可していますが、名島さんが副業をはじめたきっかけはどのようなものだったのですか?
名島:
昨年取得したサバディカル休暇(※)がきっかけです。3カ月のお休みがあるのですが、その期間で3つのことをやりたいと思っていました。シンガポールへの留学とヨーロッパ旅行、そしてスタートアップで副業をすることです。
※サバディカル休暇とは 長期間金属している従業員に対し長期間の休暇を付与する仕組みで、ヨーロッパを中心に普及している。
——これだけ時間があれば副業をしてみようという気持ちになるのはわかるのですが、なぜスタートアップだったのでしょうか?
名島:
さきほどもお話しした通り、新規事業に携わっていると、周りの社員も含めてスタートアップの手法などをアンテナ高く見ている人が多いんです。それで自然と興味を持つようになり、本業以外でのプラスアルファの経験を積みたいと思うようになりました。
——なるほど。それにしても盛りだくさんの休暇ですが、すべて実現されたんですか?
名島:
振り返っても欲張ったプランだったなあと思っています。ですが3か月も自由に使える時間はそうそうないと思いすべてやり切ってきました。海外留学や旅行をしながらフルリモートでスタートアップを支援させていただきました。
この働き方がとても楽しくて、サバティカル休暇後も週末などにお手伝いをさせていただくようになって。ここで、パラレルに働く原型ができた気がします。
——具体的に副業をする企業はどのように選んだのでしょうか?
名島:
ヤフーOB経由での紹介や元ヤフーメンバーで起業したスタートアップやその周辺の方からお声がけをいただく機会が最近増えています。紹介いただいた会社のCEOと面談をして、その1回で即決することが多いですね。
——たった1回話しただけで! それは早いですね。
名島:
タイミングとご縁を大事にしているので。ただもちろん、それだけではありません。自分が役に立てるかどうかという点は常に意識しています。また、CEOを含め副業先の方々との相性や信頼関係が築けるかどうかも大切ですよね。
この3つがクリアになれば、飛び込んでみます。正直なところ実際にやってみないとわからないこともあるので、勉強しつつお手伝いさせていただいているようなイメージです。まったく新しい業界にチャレンジさせていただけることもあり、とても楽しんでいます。
——まったく新しい業界というと、たとえば?
名島:
かなりマニアックなテクノロジーを扱っている会社よりたまたまお声がけをいただいたのですが、面談でお話を聞いたときに「私にはちょっと難しそう…」と一瞬感じたんです。
ですが、「プロダクトがわかりにくいことで、一般の人々に価値が伝えられていないことが今の課題」だということをお聞きして。それであれば、文系出身で、エンジニアでもなく、企画や広報しかやったことがない私でもできる…いや、むしろ、私だからこそお手伝いできるのではないか、と思い、ご支援させていただくことになりました。
——ビジネスを成功させるには、知ってもらうということも重要ですものね。
名島:
そうなんです。実際にジョインさせていただいた後にじっくりヒアリングをさせていただくと確かな技術力とプロダクトが既にある稀なスタートアップで、あとは認知(広く知ってもらうこと)さえできれば、ビジネスとして軌道に乗せることができるというフェーズで。施策を打つごとに事業成長が目に見えて感じられる手ごたえがあり、とてもやりがいを感じています。
——副業をするようになって、名島さんご自身にどんな変化がありましたか?
名島:
ありがたいことに、「いい変化」がほとんどです。新しい知識を得られたり、多様な新しい出会いもあったり。キャリアも人生も、格段に豊かになりました。
たとえば働く場所でいうと、定期的にワーケーションのような形で、好きな場所でお仕事をさせていただいています。つい最近は、長崎の斜面地の上にある居心地抜群な古民家に滞在していたのですが週末はすばらしい景色を眺めながら副業先のPR戦略を考えたりという働き方もしているんですよ。
(長崎の古民家ゲストハウスのワーキングスペースにて)
——すごい最先端の働き方! 素敵ですね。
名島:
こういうことができるようになったのは、サバティカル休暇での経験と、コロナをきっかけに本業(ヤフー)がフルリモートになったことで、どこにいてもパフォーマンスを落とさずに働けることがわかったのが大きいですね。
これまでは、リアルでの関係性がある人とオンラインでもコミュニケーションを取るという流れでした。ですがこれからは、今の支援先ともそうだったのですが、オンラインで出会って関係性をつくって、その後初めて直接会うということも増えてくるのかなと思っています。最初こそ違和感もありましたが、オンラインからオフラインへと繋がるって、新しい関係性の築き方ですよね。
一方で、どんなにオンラインが進化しても対面で会うオフラインのコミュニケーションはすごく大事だと考えています。
ホワイトボードを使ってブレストをするなどはオフラインの方がやりやすいですし、信頼や結束力を高めるという意味ではオフラインの方がいい気がしていて。なので、できるだけ直接お会いできる場をつくっていただくようにしています。
——いい変化がほとんどだとおっしゃっていましたが、本当に副業をするデメリットはないのでしょうか?
名島:
そうですね、強いていえば、本業と副業のプロジェクトの多忙期が重なってしまった時など、最初の頃は時間管理に苦戦しました。私のレスポンスが遅いために周りに迷惑をかけてしまっては、副業でジョインしている意味がありませんから。
そこで、最初の段階でどの領域(範囲)をどのくらい(稼働時間)支援できるのかという点をしっかりお伝えしたり、できることは進んで取り組むようにしたところ、時間や業務量をコントロールできるようになってきました。
たいへんな時もありましたが、時間管理への意識が高くなり、生産性も上がったと感じています。
——自分だけでなく、周囲にも伝えておくのが大切なんですね。
名島:
はい、そう思います。ただ、本業でも副業でも、事業を成功させるためにアレもコレもやりたいという欲が出てしまうタイプなので、この部分のコントロールはいまだに課題ではありますね。
——副業を始めたことにより、いいスパイラルが生まれているように感じたのですが、副業を成功させるポイントみたいなものはありますか?
名島:
そうですね、本業で成果を出すのが大事というのはよく言われていると思うのですが、そのとおりだと思います。というよりも、副業をやるからには、これまで以上に本業で成果を出さなくてはという意識が芽生え、生産性も上がった気がしています。
もうひとつは、オープンにすることですね。副業についてはヤフーのチームメンバーや上長にも伝えてあって、時には相談もします。結果コミュニケーションがより活発になった実感もあります。
本業で得た経験や学びを副業でアウトプットするというのが基本の導線だと思うのですが、逆に、副業で得た刺激やマインドが本業に生かせる場面も増えてきていると感じます。
(課題解決休暇を利用し高校生を対象としたキャリア教育の授業に登壇)
——副業では具体的に、どんな経験や知見が得られたのでしょうか。
名島:
スタートアップで事業をグロースさせるという経験そのものもたいへん貴重で、スキルアップにもつながっていますが、特にマインドの面で、いい影響があったと思っています。
ヤフーには課題解決休暇という制度が以前からあるのですが、今年初めて取得をしまして高校生を対象にしたキャリア教育の講座をさせていただく機会がありました。自分の経験が学生の役に立てるんだという新鮮な感動がありふだんは話せない世代の人たちと話すことで、たくさんのいい刺激を受けています。
また、こういう自由な働き方をさせていただいたり、成長のチャンスをいただいているという意味で、改めて今の会社や環境に感謝できるようになったのも、いい変化といえると思います。
——本当に副業は「いいこと尽くし」なんですね。最後に、名島さんが考える副業の魅力を教えていただけますか。
名島:
いっぱいあるのですが、まとめると、自分の経験とかスキルが誰かの、何かの、どこかの会社のためになるというのが、純粋に嬉しいです。少しでもいいので世の中の役に立つことを、これからもしていきたいです。
——名島さん、本日はありがとうございました!