五足のわらじを履く多業家が教える、副業で人生を開花させるコツとは?

株式会社エンファクトリーのCBOとして急成長する事業を牽引するかたわら、渋谷でハリネズミカフェを経営したり、フリーランスのアドバイザーとしてWEBマーケティングや新規事業のコンサルティングといった領域でも大活躍の清水正樹氏。2020年12月には「専業禁止!!」を出版。そんなカリスマ副業家に、副業で人生を豊かにするコツを伺いました。

自分で立ち上げる事業型?それとも誰かを手伝う業務委託型?

—— 副業社員ジャーナル編集部です。まずは「専業禁止!!」のご出版おめでとうございます。今日は、副業で人生を豊にするコツを伺うことを楽しみにしています!早速ですが、清水さんは副業には、どんな種類があるとお考えでしょうか?

清水氏)副業には大きく分けて、「自分で仕事をつくる『事業型』」と「他社・他者のビジネスを手伝う『業務委託型』」の二種類があると思っています。「事業型」をwebマーケ領域で考えてみると、たとえばWebメディア・サービスやECをやるなど、事業のオーナーになるイメージです。その場合にはマーケットの選び方が大事ですが、一方でよりカジュアルにはじめられるのは誰かの仕事を手伝う業務委託型かもしれません。

業務委託型で仕事を受注するためには、これまでの経験を振り返って自分のスキルの棚卸しをし、何を持っているのか、どう調理してプレゼンすればほしいと思ってもらえるかを、誰かに壁打ちになってもらって整理することが必要です。そうした上で、自分個人を売り出すつもりで、「これをやったら、これくらい」と価格感も併せて明記した業務メニュー表を作成するといいですね。

業務メニュー表は、気の利かせ方の見せ所!

清水氏)さらに、働き方の期待値調整を兼ねて、メニュー表には自分のスタイルを盛り込んでおくといいですよ。たとえば平日夜はOKだけど昼間はタイムリーに反応できないこともある、などと明記しておくことを勧めています。

清水氏)副業の人にお願いしづらいなって思う会社側のハードルは、納品の確実さ(人への信頼性)や情報漏洩の懸念が多いんですね。だから、そこに対して、補足情報で、「業務締結前にはNDAを結びます」って書いておくとか、相手が懸念することを先読みしてそれを解消するコミュニケーションを取っていくことが有効です。口で伝えてもいいことですが、それらを紙に落としておくことと、受注側社内での期待値調整にも活用できるし、何かあったときに自分を守る武器にもなります。

—— なるほど・・・!NDAを結ぶというような言葉があると、人としての信頼感が増しますね。連絡が取りやすい時間帯なども書いてあると、気の回るプロフェッショナルな印象ですね。

清水氏)そうですね。第一印象は大事です!

スモールサクセスの重要性

—— そうして、いざ業務開始後、フリーランスとして・副業人材として活躍するために、今度はどんなことが重要になってくるのでしょうか?

清水氏)ときに風呂敷を広げつつ、ときに制約も正直に見せながら、期待値調整しつつ業務範囲をすり合わせるのが大事です。端的に言うと、相手のしてほしいことのなかで自分が確実に価値を出せるところから手をつけ、相手の目に分かりやすい成功実績を出しながら、仕事の範囲を広げていくことですね。たとえばマーケティング業務を受託したとして、一番先方がやりたいたいことで今すぐ結果を出すのは難しくても、そこを今すぐ劇的に向上させられなくてもいい。「ここは比較的早めに成果がだせそうだ」と思うところで明確な成功を収めれば、チャレンジ領域のほうは、少し我慢しながら経過を見てもらえます。仕事の内容は業務上のコミュニケーションののなかで擦りあっていく側面も強いので、相手に貢献できる領域のどこかでまずは確実な信頼を得るということが重要なのです。

—— うなづきすぎて、首がちぎれます。最初の仕事のパフォーマンスは、一番重要だと思います。スモールスタート・クイックウィンはすべてに通じるんですね。

清水氏)その通りです。そうして良い関係性を築きながら、能力の掛け算で、いかにより広範囲な仕事を提案できるかがフリーランスや副業人材の分かれ目になっていきます。たとえばライターも、文章が書けることに加えて写真も撮れると、取材を丸ごと巻き取れるようになって単価が上がりますよね。依頼側も一人にお願いできるほうが、なにかと楽です。フリーランスはそういう能力の掛け算が大事で、関係性のなかでいかにプラスαでアップセルを取りに行けるか、周辺領域を巻き取りに行けるか、ですね。そうじゃないと、単価表の価格に落ちていってしまい、分解された仕事になればなるほど、単価が下がってしまうので。

—— 仕事の周辺領域を巻き取っていけるようになると非常に幅が広がるという点は、本当にその通りですよね。提案力が大事という点もとてもよくわかります。

副業はプチ起業。どんな人生を生きたいかに寄せていくツール

—— 少しお話は変わりますが、清水さんはハリネズミカフェを経営したり、個人でWEBマーケティングや新規事業のコンサルティングといった領域も手掛けられたりと本当に多彩なご活躍をされていますが、多岐にわたるキャリアを築かれた理由はどんなところにあったのですか?

清水氏)会社の仕事は、上場したりとパブリックなものになればなるほど戦略的にならざるを得なんですね。新しいことをやるにしても、既存事業との相性などを考えなければいけない。でも副業は個人なので、単純にそれに意義を感じるか、可能性を感じるかでやってみようと思えるのが魅力で、こうなりました。
 

清水氏)例えば、私がやっている事業の一つにあるものなのですが、ECサイト事業者へ手作りのメッセージカード機能を提供するSaaS事業って、ものすごく小さなマーケットなんですね。世の中にそういうものがあればいいのになくて、やったら絶対ニーズはあるけど、サービスがニッチすぎて今後も誰もやらない気がしていたんです。でも、何十社かは取れる感覚があったので、副業でやるにはちょうどいい。マーケットが大きすぎると競合も参入してきて競争が厳しいので、僕のやりたいことの市場の選び方は、細くても長寿なところを探します。ニッチマーケットで、でもニーズがあるところ。現にメッセージカード事業は2013年からやっているけれど、一度も解約がないし、競合もいないんですよ。
 

—— それはすごいですね!

清水氏)事業型にしても、業務委託型にしても、僕は副業はプチ起業だと思っているんですよ。自分で一個でも契約を回してみると、収支管理に納税というミニ経営者経験ができますし、ジェネラリスト的なスキル向上にも、個人としてのキャリアアップにも繋がります。だからこそ、何を望んでの副業なのか、自分のモチベーションを決めておく必要があると思っています。プロボノでもやりたいのか、あるいは収入が欲しいのか。一つ一つごとに考えるというよりも、どんな人生にしたいのかという大上段を考えることで、それに対して本業なり副業なり、あるいはプライベートなことが落ちてくると思うので、その大枠を意識することが大事ですね。

—— エンファクトリーでのCBO業務にハリネズミカフェの経営、ECサイト事業者へ手作りのメッセージカード機能を提供するSaaS事業、投資アドバイザーの業務にウェブ・マーケコンサルと、一見とても多岐にわたって見えるお仕事内容は、根底の部分で繋がっているのですね。今日はありがとうございました!

(text by Rina Uehara)

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