「営業」を、より深いデータ分析に基づいて科学的に”成果”に結びつけていく「セールスインテリジェンス」。国内でこの領域に特化して、サービスリリースからわずか数ヶ月でPMFを達成、1年で100社以上に導入され、シリーズAラウンドの資金調達をクローズさせたCrossBorder株式会社様。
正社員・役員が5名、業務委託メンバーが45名という組織で、どのように事業成長のスピードを維持しながら、組織をマネジメントしているのか。今回は代表取締役 CEO 小笠原羽恭様にお話を伺いました。
創業1年目の事業ピボット。「営業」にフォーカスしたサービスが大反響
ーー今日はよろしくお願いいたします。まずは御社の事業について教えていただけますか。
CrossBorderは、興味関心データを分析して、効率よく営業活動ができるという、セールスインテリジェンスの「Sales Marker」というサービスを提供しています。
従来、日本のセールスインテリジェンスと呼ばれるサービスは、顧客の「属性データ」(従業員数、売上規模、業界・業種など)をもとに営業活動をするものでした。それと比べて、私たちの提供している「Sales Marker」は、例えば、
「今、副業人材をさがしている」
「副業人材の中でも、マーケターをさがしている」
といった興味関心まで分析します。
こうした情報はWeb上の行動履歴を分析することによって可能になります。これにより、ニーズのあるお客さまに対して営業活動をすることができるようになり、効率よくキーマンにアプローチできるという新規顧客開拓のためのツールなんです。
ーーどういったお客様が導入されていますか。
営業代行の企業、SaaS企業、人材系企業が多いです。すでに110社の企業が導入されていて、リリースから11ヶ月目なんですが、順調に導入企業が増えています。
ーー会社の創業から現在まで、順調に今日まで至っておられるのでしょうか。
いえ、実は一年目に事業をピボットしています。2021年7月に設立して、最初はメディア事業をやっていました。世界中のメディアから最新のテクノロジーの活用事例、ビジネスシーンで注目されているスタートアップの特集などの記事をAIによって収集して、翻訳し、自分の欲しい情報だけが分類されて届く、というサービスです。
そのサービスが形になり始めたころ、ベンチャーキャピタルからの資金調達をすることに決めました。事業の側ピッチイベントなどに登壇するなど、資金調達を進めていきましたが、もう少し対象を絞って、深いペインを解決していくべきだと考えるに至りました。
そのタイミングで「営業」という領域にフォーカスすることにしました。なぜ「営業」という領域に着目したかというと、第一に、これが自分たちの強みを活かせる領域だったんです。もともと私自身、コンサルティングファームにいた頃、営業戦略立案のプロジェクトをやっていました。また、共同創業者のCOOは、キーエンスで営業トップだったという実績もあって。そうした背景もあって、「営業」という領域は私たちが挑戦するにあたり、ケイパビリティが高いと考えたんです。
より深く、顧客のニーズを反映した「営業活動」が可能な時代へ
さらに、市場調査の結果もあります。「営業」という領域は、海外市場と国内市場の差分が大きかったんです。テクノロジーやデータを活用して営業活動をすることが進んでいる海外の企業に比べ、日本の営業活動はまだまだの水準です。
そこで、あらためて「営業」にフォーカスしたサービスとして、2022年3月に「Sales Marker」をローンチしました。実は「Sales Marker」はローンチ当初から反響があり、初月から契約・導入までしていただいた顧客企業が複数いました。
ーー国内外の差分の大きさというのは、具体的にはどういったところに感じたのでしょうか?
例えば新規開拓をする際に使えるツール。営業のアタックリストを作れるサービス、企業データベースなどは国内にもあるのですが、お客様のニーズを分析したり、キーマンにアプローチできるサービスといったものはほとんどありません。一方海外の市場を調べると、こうしたツールを提供している企業が実に40社以上もありました。
これはセールスインテリジェンスという分野なんですが、国内ではセールスインテリジェンスと分類できるサービスは全くなかったんです。私たちはこの領域でパイオニアになろう、と思っています。
ーーセールスという領域にターゲットを絞って事業を始めてみて1年、いかがだったのでしょうか?
ニーズが高い企業が多いことがわかりました。
営業活動における理想というと、お客様のニーズのあるタイミングで、ニーズのあるお客様に対して営業をかけたい、というものですよね。こう考える方は多いんです。でもそれを実現できるものがなかった、ということが強く感じられました。
資金調達と成長スピードについて。リリース後、いつPMFした?
ーー資金調達はどのように進んでいますか。
事業のピボットをして、解像度を高めたことによって、メディア時代に想定していた2倍の金額を資金調達しました。実は今月(インタビューは2023年3月に実施)、シリーズAラウンドの資金調達をクローズする予定です。
ーーすごいスピードですね。もう次のフェーズに入られるということなんですね。
シード調達を終えたタイミングでは、1年〜1年半くらいでシリーズAラウンドの資金調達を行えたらいいなと思っていました。なので、ペースとして想定通り、ただし規模としては想定の2倍程度、つまり2倍の速度で成長しています。
昨年のシードラウンド時に公開した資金調達のニュース(2022/2/28)
ーー多くのスタートアップが苦労するのは、シリーズAラウンドの資金調達に向かって、サービスをPMF(プロダクト・マーケット・フィット=市場に受け入れられるプロダクトを開発し、検証するプロセス)させていくことだと思うのですが、御社はすでにPMFできている状態ということでしょうか。
今回、資金調達している過程で、MRR(マンスリー・リカーリング・レベニュー=月次経常収益のこと)やチャーンレート(解約率)などの実績を通して、「Sales Marker」はある程度PMFできている、あるいはPMFできる見込みが高いと評価されました。
3月にローンチして、6月〜8月くらいには、すでに私の実感として、「しっかりとニーズをつかんだサービスを提供できている」という手応えがありました。特に商談の中で、営業担当者の方や営業出身の方にサービスのご説明をするときには非常に反響が大きくて。聞いていただくうちに、文字通り目を輝かせてくださるんですよね。
あとは、導入後にしっかりと成果を出していくことです。ということでローンチ後に力を入れているのがカスタマーサクセスやサポートです。お客様が「Sales Marker」を使いこなして成果に結びつけていただけるように、サポートの改善も機能拡充も、毎週のようにブラッシュアップしています。その成果もあり、継続的に使ってくださるユーザー企業様もかなり多い状態になっているので、PMFに関しても自信を深めてきました。
それから、もう一つ加えると、私たちは広告をあまり出していなくて、紹介が多いサービスなんです。バイラルマーケティングではないのですが、リファラルで自然と広まっていっているんです。その辺りもPMFの指標と見られることがあるみたいです。
ーー非常に順調に見えます! 今取り組んでいる課題や、これから取り組むべき課題はありますか。
「Sales Marker」は幅広いデータを収集してはいるんですが、ユーザー企業様によって求めていらっしゃるデータや情報は違います。一方、さまざまなデータを網羅的に取り揃える、というのは時間もかかりすぎてなかなか困難です。戦略的にニーズの高いデータを取り入れられるようにサービス開発をしていくことが、今の課題です。
他には、営業を未経験の方もユーザーさんにおられたりするのですが、未経験の方も自走できるようなツールにしていきたい、というのもあります。ツールを使って、分析をして営業をすれば成果は出てきますが、ツールを表面的に使ってしまうと成果は出ません。情報をどうやって分析して活用していけば成果が上がるのか。そういった知見を、ワークフロー機能などを実装して標準化していきたいと思っています。
成長中の事業を支えるために、業務委託メンバー中心に組織を拡大するメリットとは?
ーーCrossBorder様は、正社員・役員が5名、そのほかの業務委託メンバーが45名で、全体で50名の組織と伺いました。数の上では業務委託メンバー中心の組織づくりです。業務委託メンバーを中心に組織を拡大していかれることのメリットはありますか。
メリットはいくつもあります。
一つは、正社員採用にかかる時間。正社員採用は企業側の選考にも、候補者の意思決定にも時間がかかります。良い候補者と出会えたとしても、その方にジョインいただけるのは半年後とか、早くても3ヶ月後になります。そうすると、その半年間は、募集職種の、例えばマーケターがいないということに会社として苦しみ続けなくてはなりません。
それに、正社員採用につきもののミスマッチのリスク。会社と候補者が、本当にお互いに合うかどうかは、結局一緒に働き出してみないとわかりません。
正社員採用はこのように、会社にとっても個人にとってもハードルが高い。そんな中、業務委託メンバーに入ってもらうことは、これらのリスクやかかる時間に対するペインがありません。来週面接して、再来週から稼働を始めるーーそんな時間軸で動き出すことができますし、働き始めてからお互いに合わないということがあったら、合意して解約することも、お互いにそれほど大きな痛手になりません。
そういう柔軟性やスピード感は、業務委託人材で組織をつくっていくメリットです。
副業なら、正社員採用で出会いづらい経験・スキルの豊富な人材に出会える
ーー正社員を採用することの課題やリスクが、業務委託メンバーと働く上では少ないんですね。
それから、案外知られていないかもしれないのですが、業務委託で出会える人材の質の高さというメリットもあります。
もちろん、正社員で働いている方でスキルフルな方は多いと思います。ですが、そういった方が転職市場に出てくる期間は短いと思いますし、相対的に市場にいる人数は少なくなるでしょう。その点、「副業」や業務委託という働き方は、スキルフルな正社員の方で、「副業もしてみよう」と思われるような余力のある方たちに出会えるわけですから、会社にとってメリットが大きいと思います。
事業成長しているタイミングで人材をさがすならば、副業人材は要注目です。
もう一点加えると、サービスリリース当初のタイミングでは、フルタイムで人材が必要になる職種が少ないというのもあるかもしれません。
「デザイナーの手が週一くらいほしい」
というような、リソースの不足の仕方だと思うんです。そのときに正社員で週5の人を採用してしまったら、週4日分を持て余してしまいます。無駄なことをしてしまったり、コストもかかったりします。
そういうタイミングでは、副業人材や業務委託人材の提供可能リソースは、非常にマッチしやすいです。それも、事業の初期フェーズで業務委託人材に力を借りるメリットでしょうね。
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前編をお読みいただきありがとうございます!後編はこちら。
CrossBorder様のお話をヒントに、
✔️本業で活躍しているレベルの優秀な副業人材を探したい
✔️自社の抱えている課題を解決できる経験を持った副業人材を探したい
という企業様は、ぜひお問合せ、ご相談ください(相談は無料です)。
シューマツワーカーでは、約 43,000人(2023年6月時点)の豊富な複業人材データベースから、企業様のご希望に沿った人材をご紹介するだけでなく、副業メンバーとして働き始めたワーカー様と企業様に伴走したサポートをご提供しています。お気軽にお問合せください!