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「“畳み人”の副業が増える」幻冬舎・設楽悠介氏と考えるこれからの働き方
今回は株式会社幻冬舎に務めながら書籍の出版や講演、上場企業の新規事業アドバイザーなど…
2020.06.11
2019.11.22
“シューマツワーカー アンバサダー”とは、人材領域でご活躍されている方々に副業や働き方改革を世の中に広めるアンバサダーを務めていただき、シューマツワーカーと共に世の中へ一次情報の発信・啓蒙を行っていただくプロジェクトです。
今回は会社や組織のあり方・多様な働き方を発信する「サイボウズ式」の初代編集長で、現在コーポレートブランディング部長を務めている大槻幸夫さんにお話を伺いました。
――まずは、自己紹介からお願いします。
サイボウズ株式会社の大槻幸夫と申します。キャリアとしては、2000年に大学を卒業後に知人とベンチャーを起業しました。5年ほど携わったのち、2005年にサイボウズへ入社しました。
――サイボウズでは、どのような業務を担当しているのでしょうか。
ベンチャーをしていたときにマーケティングに興味を持ったので、最初はマーケティングをメインに担当していました。2011年にはマーケティング部署の部長に就任し、2012年にオウンドメディア「サイボウズ式」をローンチ。初代編集長になりました。今はサイボウズ式をメンバーに任せて、広報チームを含むコーポレートブランディング部の部長を務めています。
――今でこそオウンドメディアは一般的ですが、「サイボウズ式」はその先駆けですよね。サイボウズ式には「働き方」をテーマにした記事が多いですが、それはなぜでしょうか。
企業のオウンドメディアを立ち上げたものの、最初は方向性が見えなくて。「水道橋駅(サイボウズの旧オフィスがあった場所)のランチマップ」など、とにかくいろんなテーマのコンテンツを作っていました(笑)。
模索していく中で、“働くママに関する記事”や“働き方に詳しい専門家と代表・青野の対談記事”のPVが伸びるようになったんです。そのとき、「働き方」に関するコンテンツの需要を確信してテーマを絞ることに決めました。この頃から世の中で働き方に対する注目度が高くなったという背景もありますね。
――なるほど。「サイボウズ式」の記事を読んで分かる通り、サイボウズは、“副業”という新しい働き方も積極的に受け入れていますよね。
そうですね。しかし、はじめからそうだったわけではありません。実は、当初は副業を禁止していたんです。
副業でテニスコーチをやりたいと申し出た社員がいたのですが、報酬をもらうのは許可していませんでした。しかし、代表の青野は、「本当にそのルールのままでいいのか」という思いがずっと心に残っていました。当時は社会的に副業を禁止しているのが当たり前でしたが、「そもそも、なんで副業を禁止しているんだろう」と疑問に思ったんです。それをきっかけに副業解禁に動きました。
サイボウズでは人事制度を決めるとき、ルールを極力少なくして、もし問題が起きたらそこからルールを新たに設けるようにしています。何事も試しに挑戦してみよう、という考えです。だから副業も、まずは取り入れてみようと試験的に始まりました。
――社員の副業を解禁した結果はどうでしたか?
初めは、先ほど話したテニスコーチのように、サイボウズが手掛けている事業と被らないもののみ副業を許可していました。
しかしサイボウズで培ったスキルや経験もその人にとっての価値です。会社としては、個人が自立できることも応援したいですし、制約があると誰も副業をやりたくなくなるんじゃないかという考えもありました。
だから、途中からどのような業務を副業するかを社内に共有すれば、自社事業に近いものでも副業を許可することにしました。
――サイボウズでは、どのように社員の副業を管理しているのでしょうか?
副業は、隠したりコソコソしたりするからマイナスなイメージになってしまうと考えています。だから副業の事実を見える化することにしたんです。
というのも、社内で「副業に力を入れすぎて本業が片手間になってしまうのでは?」という疑問が上がったんです。こういう疑問が出てくるのは、どのような副業をどれくらいの時間しているのか不透明だからだと考えました。
なので、サイボウズの業務システム「kintone(キントーン)」や「Garoon(ガルーン)」を使って誰がどのような副業をどの時間帯にしているのかを社内全員が確認できるようにしました。
――サイボウズでは社員の副業を許可している一方で、副業人材も受け入れていますよね。
はい。採用した副業人材のうちの一人は、新潟県でNPOを運営しながら、サイボウズ式をはじめとしたメディア周りの編集やコンサルを担当してもらっています。週に2回リモートで作業してくれています。
――どのような方を副業で採用しているのでしょうか?
ありがたいことに、サイボウズで副業をしたいと言ってくださる方は多いのですが、副業の方はマインドセットよりもスキルセットを重視しています。
自由度の高い社風に惹かれたという動機も嬉しいのですが、そういう方はどうしても自分の働き方を優先してしまいがちです。会社としてはご自身の働き方よりも会社に貢献できる方を採用したいのが本音。だから、副業の方はスキルが尖っていてレベルの高い人を求めています。
――副業人材を採用して難しいと感じていることはありますか?
リモートワークがメインになっているので、温度感がわからないことですね。サイボウズの仕事に満足しているかが常に気になります。それを把握するために、定期的にオンラインで1on1の時間をとるようにしています。
また、サイボウズの社員は日報を書く習慣があるので、同じように日報を書いてもらい、モチベーションを把握するようにしています。副業の方を見ていると、自走してコミュニケーションを積極的にとれる方が副業に向いていると感じますね。
――最後に、副業という働き方が一般化するには、どのようなアクションが必要だと思いますか?
僕が若手社員に伝えているのは、まずはサイボウズで結果を出すと副業の選択肢が広がるよということ。本業を中途半端なままにゼロから副業を始めたら、本業先の人から評価が下がり、副業もうまくいきません。
きちんと本業で成果を出したら、「あの施策を担当した人からノウハウを教えてほしい」と思ってもらえます。そこから取材を受けたり、登壇したりすることで、副業の声がかかるようになります。つまり、本業でしっかり成果を出して、自分のブランド力をあげることが副業を成功させるポイントだと思います。