外部人材のパフォーマンスを発揮する鍵は“当事者意識”

株式会社シューマツワーカーでは、2019年8月、「シューマツワーカー アンバサダー」プロジェクトをスタート。シューマツワーカー アンバサダーとは、人材領域でご活躍されている方々に“副業(複業)”、“働き方改革”を世の中に広めるアンバサダーを務めていただき、シューマツワーカーと共に世の中へ一次情報の発信・啓蒙を行っていただくプロジェクトです。

その一環として、シューマツワーカーが運営するオウンドメディア「副業社員.JOURNAL」にて、アンバサダーに取材する連載がスタート。

今回は、フリーランスのPRプランナーとして活躍する傍ら、2017年1月に設立した「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」で代表理事を務める平田麻莉さんにお話を伺いました。 

――ではまず、自己紹介からお願いいたします。

平田麻莉(以下、平田):2017年に設立された非営利型の一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」、通称フリーランス協会で代表理事をしています。

フリーランス協会は、フリーランスによる、フリーランスのための、オープンでゆるやかなつながりを持ったコミュニティであり、インフラです。 

私自身は、大学在学中にPR会社のビルコムの創業期にジョインし、国内外50社以上のPR戦略立案・実行に携わり、それまで属人的とされていた戦略的PR手法の体系化を試みて社内研修を行ったりしていた経験から、広報を一つのキャリアの柱としています。

現在は、プロボノの社会活動として、2017年1月にプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の運営を行う傍ら、個人事業主として広報アドバイザーや出版プロデュース、ビジネススクール教材の制作なども行なっています。

――ありがとうございます。ご自身も長らくフリーランスとして働かれていますが、フリーランスなどの外部人材のマーケットは、昔と今でどのように変わっていると思いますか?

平田:フリーランスや副業といった“外部人材”はトレンドのように使われていますが、実は最近できたのではなく、以前から活用されています。

特に、広告業界や出版業界では、正社員を経てフリーランスになることが一つのキャリアパスとして存在しています。また、IT業界だと人員が必要となる場合にフリーランスが活躍するのはわりと一般的ですよね。

ただ最近は、“外注”ではなく“インサイダー”としてチームの一員となり、主体的に自走や伴走をするパターンが増えてきました。社内のスタッフと一緒にプロジェクトを進めていくことで、当事者意識を持って携われるようになったんです。

――なるほど。インサイダーとして働く人が増えた要因や社会的背景について教えてください。

平田:人材をシェアするという考え方が根付いてきているからではないでしょうか。従来は毎日出勤して、一緒に働く人同士が空間を共有することが当たり前でした。

しかし、最近はさまざまな企業でリモートワークが推奨されて、内と外の境界線がなくなってきています。パソコンひとつあれば、リモートでもうまくワークできるようになっていますよね。 

その結果、一つの会社に依存しない副業やフリーランスという働き方が増えてきたと考えています。労働人口が減少して人材が限られているこの時代、能力のある優秀な人を複数の企業でシェアすることが必要になっています。

外部人材の活用は、今後さらに広がっていく

――“外部人材”というマーケットは、今後どう広がっていくと思いますか? 

平田:広がっていくことは間違いないと思います。しかし、社員の副業が当たり前になるには、まだ時間がかかるのではないでしょうか。なぜなら、日本は家族経営という考えが根強く、諸外国と比べて人材流動性も低いため、外部人材を積極的に受け入れることに抵抗がある企業も依然として多いからです。まずは、そこの意識変化から始めなければいけません。

――社員の副業解禁をうまく活用できている企業には、どのような特徴があるのでしょうか。

平田:本業で評価をされながら、空いた時間で副業をするという働き方は誰しもできるわけではありません。結局のところ、本業で活躍できる人しか副業はうまくいかないのがシビアな現実ではないでしょうか。

とはいえ、全員が副業をしなければいけないとも思いません。趣向性として、いろいろな業務をマルチにできる人もいれば、職人のようにひとつのことに集中すればするほどパフォーマンスが上がる人もいます。副業できる人だけがすごいという考え方ではなく、自分の選んだ働き方を選んで結果を出すことが大切です。

外部人材にもビジョンや経営課題をきちんと伝えることが大切

 ――外部人材の受け入れを検討している企業には、どのようなアドバイスを送っていますか?

平田:副業人材の活用でいえば、まだまだ始まったばかり。今は企業側も人材側も、スムーズで効果的な付き合い方のコツや知見を十分にご存じないケースも多いので、たとえ副業社員がうまく稼働できなくても、すぐに“ダメ”と判断しないでいただきたいと伝えています。国をあげて限られた人材リソースを活かすための施策として試行錯誤をしているフェーズ。だから企業には各企業には“副業”という新たな人材層を自社の課題解決や成長にうまく取り込めるよう一緒に模索してほしいですね。

――企業が副業人材を受け入れるには、具体的にどのようなことが必要になりますか?

平田:いろいろな観点がありますが、企業のビジョンや目標をタスクベースではなく、ビジョンレベルで副業人材にも伝えることが一番大切だと考えています。

やはり、“外部の人材”や”アウトソース”というていで扱ってしまうと、依頼しているタスクについてしかコミュニケーションを取らなくなりがちです。すると、「何のためにこの業務をしていて」「企業にどう役立つのか」が理解できないので、自律的に動きづらいですし、コミットする意識も薄れてしまいます。

――真の意味でインサイダーとして巻き込むことが重要なんですね。

平田:まさにそうですね。いかに社内メンバーに近い立場で、コミットしてもらえるかが大切。「うちの会社は〜〜」と会社主語で語ってもらえるのが理想です。帰属意識は掛け持ちできますから。

「副業人材だから」と下請け扱いするのも、お客様扱いするのも違うと思っていて。経営課題やビジョンを共有し、同じ企業の同じチームとして扱ったほうが、副業人材もパフォーマンスを発揮しやすいと考えています。

目の前の業務に“手触り感”を持って取り組めば、「仕事は楽しい!」と感じられる

――最後に、フリーランス協会として外部人材活用について今後どのような啓蒙活動を行なっていく予定ですか?

平田:「フリーランス協会」としては、フリーランスや副業を含む働き方の選択肢を増やすことと、彼らが働きやすい環境に整備することが第一と考えています。

ただ、先ほども言ったとおり、誰もがフリーランスになるべきだとは思いません。“キャリア自律”がフリーランス協会のビジョンなので、会社員として本業の中で自分ならではの活躍や価値提供をして働く人が増えるなら、それでも良いのです。

たとえ本業、フリーランス、副業など、働き方は異なっていても、目の前の業務を自分ごととして“手触り感”を持って取り組めるようになれば、「働くことは楽しい!」と思ってもらえると思います。

人生において働く時間はとても長いです。どうせ働くなら楽しいほうがいいですよね。だから、そこに魂を込められる人が増えるようなお手伝いをしたいと思っています。

 

Keywordキーワード