「誰もがフレキシブルに働ける社会に」 パラレルキャリアの未来

学生時代からパラレルワーク

松村幸弥(以下、松村):日比谷さん、こんにちは!日比谷さんはいくつもの肩書きを持ち、さまざまな分野で活動されていますよね。改めて、自己紹介をお願いできますでしょうか。

 

日比谷尚武(以下、日比谷):そうですね、現在いくつ肩書きを持っているかたまにわからなくなります(笑)。企業コンサルタントをはじめ、“働き方”を選択できる社会づくりの実現を目指す一般社団法人「at Will Work」の理事、官僚とイノベータをつなぐ一般社団法人「Public Meets Innovation (PMI)」の理事――あとは、株式会社PR Tableのエバンジェリストをしたり、「渋谷をつなげる30人」という、渋谷区で行政とNPOをつなげて課題解決をするプロジェクトの運営もしています。また、ロックバーの経営もしています。

 

松村:本当に、幅広いジャンルで活躍されていますよね!どのような経緯から様々な肩書きで働くようになったのでしょうか。

 

日比谷:もともといくつかの案件を並行して進めることに抵抗がないみたいで、大学生時代から興味のある複数の領域のプロジェクトに関わっていました。今思い返すと、学生時代からパラレルワーカーのような働き方をしていたんですよね。

しかし大学卒業後は、パラレルワーカーになることなく、大手企業に新卒で入社しました。規模の大きなプロジェクトのマネジメントも経験した方がいいなと思ったんです。4年ほど勤めた後に退社し、大学時代の後輩がつくったベンチャー企業に取締役として入社しました。

後輩の会社では、副業禁止というわけではなかったのですが、それなりに忙しいフェーズだったので、基本的には専業だったんですよ。

ただ、たまにですが、「四畳半の部屋を数人で借りるプロジェクト」をやってみたり、知り合いのスタートアップを手伝ったりっていうことをやっていましたね。割合はそんな大きくはないですが、本業以外にサイドプロジェクトやるということは定期的に行っていました。

そういった業務外の活動を通じ、少しずつ自分の興味の対象が広がってきたんです。それで本業をもちながら副業をすることに限界を感じ、独立して現在に至ります。

 

松村:なるほど。徐々に今のような働き方になったんですね。

 

副業社員採用は、正社員採用とまったく異なる

 

松村:日比谷さんが理事を務めているat Will Workでは、「“働き方”を選択できる社会へ」をテーマにしていますよね。年功序列や終身雇用が当たり前だった時代から、働き方はどのように変化していると思いますか?

 

日比谷:年功序列や終身雇用といった仕組みが定着したのは戦後の話で、実は日本の歴史の中でそこまで長いわけではありません。高度経済成長期では、終身雇用による長期的に強い組織作りを求められていたので、当時の時代背景からは必要とされていた制度だったんですよね。

ただ、時代が変わり、既存の組織モデルでは太刀打ちできなくなってきて、新しい仕組みが必要となりました。そこで企業が新しい働き方を取り入れたり、制度を一新したりしようと動いているのが今の社会だと思います。

 

松村: 終身雇用制度が良い、悪いみたいな話ではなくて、時代背景や業種、個人の置かれている環境や志向などによってベターな制度を選ぶべきですよね。組織モデルの変化にあたって、“採用”も変わってきてますよね。

 

日比谷:そうですね。もし自分が企業の新規プロジェクトを任された場合、専門的な知識を持っている人をスポットで採りたいと思いますね。そういう人が都合よくピンポイントでジョインしてくれたらいいけれど、スキルや条件が合っていてコミュニケーションも取りやすい人となると、探すのはけっこう難しいんですよね。

 

松村:あと、副業社員を採用する際は、正社員とは全然違う観点を持つ必要があります。例えば、「週何時間くらい稼働するのか」や「どの時間帯に稼働する想定なのか」「平日にミーティングは可能なのか」等といった条件をあやふやにしてスタートしてしまうと、トラブルになりやすいんです。だからシューマツワーカーでは、企業と副業社員の間に入り、事前にそれらの観点を双方が握れるよう努めています。

 

日比谷:たしかに、副業社員を採用したい企業のほとんどは、そのノウハウがまだないですね。だから、シューマツワーカーのように、選考から経過面談までしてくれる企業はありがたいですね。

 

松村:ありがとうございます。シューマツワーカーを運営していてわかったのが、企業が副業社員採用を始めるには、最初の1人目の採用がすごい大切だということです。1人目の副業社員がうまくワークすれば、2人目・3人目の副業社員も採用しやすくなります。だからこそ僕たちは、紹介するだけでなく、きちんとワークするまでサポートをするようにしています。

 

流動的な働き方を当たり前にするために必要なこと

 

松村:最後に、日比谷さんが思う「今後の日本の理想の働き方」を教えてください。

 

日比谷: 個人的に興味を持っているのは、“流動的な働き方”。本人が望むか望まないかは関係なく、流動的な働き方にならざるを得なくなるのではないでしょうか。なぜなら、今後企業から求められるスキルや業務ボリュームが細かく定義されてくるからです。それこそ、フリーランスや副業社員でもいいじゃんってなりますよね。

ただそんな中でも、当然うまくワークできないフリーランスの方も出てきます。

例えば、病気をしたりケガをしたり。女性なら結婚をしたり子どもを産んだりとか。あとは、狙っていたスキルが廃れてしまったりなども考えられますよね。そうなった人も仕事の軌道に乗るにはどうしたらいいのかを模索しています。

みんなが最先端で元気に走れればいいけれど、そうじゃない人もぜったいに生まれてしまう。「自由に働きたい&働ける人が活躍しやすい」という観点もさることながら、そんな人たちを支えられる社会が理想ですね。

 

松村:なるほど。自由度の高い働き方が進んでいるアメリカでは、フリーランス向けの保険もありますもんね。日本も、その時代の働き方に合わせた保険や福利厚生などの仕組みを作る必要がありますよね。シューマツワーカーもプラットフォーマーとして、様々なリスクヘッジを行っていきたいと思います。今日は、ありがとうございました!

 

Keywordキーワード