急成長ウェルネスブランドTENTIALのCTOに副業エンジニア活用の実態を直撃!【イベントレポート公開】

累計資金調達額20億円の急成長スタートアップ、株式会社TENTIAL様。事業計画・人員計画の達成に向けて、採用の壁・育成の壁を乗り越えてきたエンジニアチームを統括する、CTO市來氏に登壇いただいた7月のセミナーを特別公開いたします!

エンジニア採用や社内のスキル・リソース不足、技術負債への適切なアプローチなどにお悩みの方は、ぜひご覧ください。

登壇者紹介

株式会社TENTIAL
執行役員CTO テクノロジー本部長
市來 晟弥 氏

3年後の組織図を描きながら、長期目線で「採用」と「育成」に向き合う

ー エンジニアチームの「組織づくり」は重要なテーマですよね。TENTIAL様では、開発計画に伴う組織づくりをどのように考えて進めておられるでしょうか。

市來 TENTIALではいつも「3年後の事業計画」をもとに、「3年後の組織図」をつくっているんです。そこから逆算して、「2年後の組織」「1年後の組織」と考えていくんです。そうすると、これから1年間でつくっていかなくてはならない組織の像が浮かびます。

ー 「3年後の組織図」ですか。

市來 はい、架空のメンバーをポジションに割り当てて、具体的に役割やペルソナを想定しながら作り込んでいきます。「3年後の組織図」をつくることで、短期的には採用がかなわない層や、中長期的に口説く必要のある層が明確に見えてきます。採用活動を進める上では、そういった部分をどのタイミングで、どのように乗り越える必要が出てくるのかといった解像度が上がるので、定期的に見直すことにしています。

ー 具体的には、どのように採用活動に活かされるのでしょうか。

市來 例えばTENTIALのエンジニア組織では、一度メンバークラスの業務を経験しないとマネージャークラスになることはできない組織制度にしています。その場合、マネージャー陣の採用または育成については、中長期的な計画が必要になります。そのように、採用活動が短期的な層と中長期的な層、必要としているスキルセット、採用市場の状況の変化にどのように対応していくのか、など、採用活動において検討しなくてはならない問題における判断軸として、機能しています。

中長期的に付き合いたい副業人材は、「正社員」候補として

ー 事業計画に基づいて採用計画をつくっていくということですね。その中で、正社員人材と、副業など業務委託人材の割り振りはどのようにしておられますか。ポジションごとに判断するイメージなのでしょうか?

市來 中長期的な活用か、短期的な活用かによって、考え方も分かれています。

長期的な活用の例だと、テクノロジー戦略部でのデータ分析業務など、これは分析のみならずビジネスサイド、もっと言えば事業戦略やIRに紐づくようなインパクトの分析まで含む総合力の求められるポジションなのですが、経験値があるメンバーが必要になります。TENTIALの扱うD2C領域への知見やビジネスサイドへの理解も必要です。そのあたりを踏まえると、このポジションに求めているのは「副業からの正社員化」を見据えた副業人材です。

具体的には、業務委託の稼働を週4から週5に変えてもらうなど、徐々にチームへのコミットを増やして、正社員化を視野に入れた活躍をしていただいています

副業人材が活躍する3つのシーン。まずは短期プロジェクトへのアサイン

ー なるほど。長期的に副業人材を活用したい場合は、将来的な正社員化を狙っての、一種の採用活動としての関係性の築き方なんですね。短期の場合はいかがでしょうか。

市來 短期的な場合は、特定の一機能が必要になった場合など、タスクフォース的に役割を担っていただくというケースが多いです。例えば、チームのリソースだけでは、この機能をつくることができないという場合に、「この機能をつくる人材がほしい」と希望して、短期的なプロジェクトをお任せしていきます。

別の例としては、「技術負債を一気に解消したい」というケースもあります。技術負債というのは永遠に先送りできるものではないので、あるタイミングで解決できるのであれば、そのときにしっかりと予算を投資して、技術負債を解消していくことを目的としたプロジェクトを進めたいです。しかし、そこに正社員メンバーが入るとなると、そのメンバーが抱えている業務に支障が出ます。そこで、副業人材に入っていただくというケースです。

また、経験豊富な副業人材にコンサルタントとして入ってもらう場合も、短〜中期的なイメージです。基本的な思想としては「自分たちでできるようになることがベスト」だと考えているので、コンサルタントとして入ってくださる方には週1程度チームに関わっていただき、その領域の知見をチームメンバーにインプットしていただいたり、壁打ちしていただきます。事業成長という目的のみならず、メンバーの育成の観点でも、こうしたコンサルティング系の副業活用はメリットがあります。

副業エンジニアに入っていただく様々なシーンがありますが、忘れてはいけないと考えていることがあります。それは、そもそも、エンジニアの組織運営において、副業人材の活用も採用活動も、「人員計画の達成」が目的だということです。

そう考えると、育成環境をより良くするための採用なのか、育成を前提とした採用なのかーーという観点もあるんです。そこは明確に分けて考えていて、いずれも組織の「人員計画」をしっかりと実現していくための道筋の違いとして捉えています。

社内メンバーでは知見が足りない「ピンポイントな悩み」を、副業人材が解決

ー 正社員化を前提とするのでない副業人材の活用シーンを、3つご紹介いただきました。事業上の特定の目的を達成するための「タスクフォース」的な活用、技術負債の解消のための活用、チームにない知見を得るためのコンサルティング的な活用。TENTIAL様ではそれぞれのシーンについて実績がお有りかと思うのですが、コンサルティングと技術負債のケースについて、もう少し詳しく教えていただけるでしょうか。

市來 はい、まずはコンサルティングの活用について。僕たちの組織では、4~5年程度の経験を持ったエンジニアが多いんです。それ以上の経験年数を持つシニアレベルの知見が必要な場面が出てきたとき、該当する経験を持った副業人材を活用するイメージです。

具体的には、インフラ周りなどは良い事例です。インフラは現在、経験豊富な専任メンバーを置くほどの業務量が発生していない事情もあり、メンバーたちが実務を分担して、経験豊富な副業人材にコンサル的に全体を見て、アドバイスなどをもらっています。この体制にすることによって、インフラに特化した知見があるメンバーがいなくても、知見のある副業人材のアドバイスをもらいながら進められることで、チームとしてクオリティを保てます。

技術負債の解消を、事業を止めずにやりきるための”副業”活用

ー 技術負債のケースについても聞かせてください。技術負債はいつ、どのくらいのリソースやコストをかけて解消させるのか、計画することが難しいのではないでしょうか。TENTIAL様ではどのように行われているのでしょうか?

市來 3カ年計画には盛り込んでいないんですが、3ヶ月程度の短期的な計画を立てる段階では、必ず計画に盛り込みます。これまで、年に一回は、技術負債解消に向けたプロジェクトを走らせています。

そのときに、事業をなるべく止めずに技術負債を解消するスキームとして、副業人材を活用しています。既存のエンジニアメンバーが担当することになると、今扱っているプロダクト開発を止めなくてはなりませんから。

「大量採用」を志向しないチームの、エンジニア採用予算の組み立て方

ー ありがとうございます。それでは次のテーマをお伺いしていきたいと思います。次のテーマは「エンジニアチームの採用予算と意思決定について」。まずはエンジニア採用予算をどうされているか、教えていただけますでしょうか。

市來 予算は、手数料を含めて多めに見ておくというのを決めています。優秀なエンジニアに週5フルタイムで入っていただく場合には、月100万円以上のプレイヤーが珍しくない世界です。実際には60~70万円だったとしても、エージェントフィーなど考えるとやはり100万円くらいと見積もるのが良いと考えています。ですので、手数料も含めてしっかり予算確保しておきます。

ここで予算を縮小した形で考えていると、「リファラルで採用しよう」という解決策が上がりがちなんです。ところが「リファラル採用」には、母集団形成、採用広報、技術広報、それを実現するための採用戦略の立案など、非常に労力がかかり、かつ複雑に施策を運用していく必要が生じます。それが見えてくると「じゃあまず走り出そう!」という事態に陥りがちなんですが、この方法で効果が高いのは、大量採用を前提とするケースだけだと思うんです。

そして私たちTENTIALの場合、「大量採用したい」というわけではありません。ピンポイントでこういう方に出会いたい、入ってほしい、という採用活動なんです。そう思うと、社内のリソースをかなりかけていく必要のある「リファラル採用」を行うのではなく、全員が事業に集中して、エージェントさんを活用して採用活動を進める方が、結果的にコストパフォーマンスも良いのではないかと考えています。

ー 業務委託メンバーのための予算は、また別に確保しているのでしょうか?

市來 そうですね。業務委託メンバーの予算に関しては、正社員採用費用に多少上乗せして見ておく程度にとどめています。そもそも採用コストや人件費をどれくらいかけるべきかは、事業がうまくいっているかどうかによります。ですから優先順位としては、まずは今いるメンバーでしっかりバリューを出すこと。事業成果を上げること。その上で、業務委託の方を入れるかどうかを検討していきます。

チームの状態を数値化し、事業と組織のために必要なリソースを必要なタイミングで

ー ここは会社によって大きく違うところだと思うのですが、エンジニア採用に関しては、どういったタイミングで人員を増やす意思決定をされるのでしょうか?

市來 基本的にはエンジニアチームのメンバーへのヒアリングをいちばんの参考にしています。TENTIALでは定期的にエンジニアチームのeNPS(*)を定期的にとっているんですが、この数値が下がり始めると特に注意してヒアリングします。この数値が下がっているときにはメンバーに負荷がかかりすぎて、疲弊してしまっているメンバーがいることも多いんです。

➡️ * eNPSとは
「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」のこと。従業員向けのNPS。「親しい知人・友人にあなたの職場をどれくらい勧めたいか」を聞き、「職場の推奨度」を数値化して示す。

チームのそういった状態を検知したときに、マネージャー陣と課題を深掘りして議論します。そうすることで、「エンジニアの人員を増やすべきだ」「そもそも開発チームがするべきでない業務を引き受けてしまっているので、他チームと調整すべきだ」など、解決方法が見えてきます。

ー ここで良い質問をいただいていますので、お聞きしてもいいでしょうか。「正社員採用に時間がかかるポジションを、一時的に副業や業務委託メンバーを採用することで補充することはありますか?」こちらはいかがでしょうか。

市來 それによってプロジェクトや事業がうまくいったり、eNPSが上がるのであれば、一時的にでもリソースを確保すべきだと考えています。とはいえそれも、ケースバイケースです。受け入れるチームや業務内容によっては、業務委託メンバーでは解決できないという場合もありますので。

ー 非常に参考になりました。ありがとうございます。では、ここからは後半に入っていきたいと思います! 後半ではTENTIAL様で行ってエンジニア採用や組織づくりで役に立っている、「採用広報」「選考フロー」「副業人材とのコミュニケーション」などについて、詳しく伺っていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

本レポートは、2023年7月6日に開催されたセミナー「急成長ウェルネスブランドTENTIALのCTOに副業エンジニア活用の実態を直撃!」の前半パートを抜粋したものです。

TENTIAL様が登壇されたこのセミナー全体のまとめ資料を、ダウンロードいただけます。

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