25年前は終身雇用が当たり前だった。副業社員が当たり前の時代はきっと来る。

リクルートに勤めながら副業、のちに起業するまでの道のりとは

松村:実は、森本さんとずっとお話してみたくて、今日はとてもワクワクしてます! まずは、リクルート時代のことやご自身の副業経験、そして独立した背景などをまじえ自己紹介をお願い致します。

森本:獨協大学の外国語学部英語学科を卒業して、リクルート子会社のリクルート人材センター(現リクルートキャリア)に新卒で入社しています。いまはリクルートキャリアとして社員は4,600人くらいいますが、そのときは100人くらいでしたね。当時の日本は終身雇用が当たり前で、転職市場ができる前の時代でしたから。

松村:外国語学部を出て人材会社に入るのも珍しいですよね。なぜこの業界を選んだのでしょうか。

森本:同じ学部で同じ業界に進む人はほとんどいませんでしたね。新卒で総合職の女性はわたしだけでしたし。

人材業界に進んだ理由は、ふたつあります。ひとつは、大学生時代にたまたま手に取った本がきっかけ。“アメリカでは転職をしながら個人のバリューを上げている”と書いてあり、ピンときたんです。これからは日本でも転職の時代がくると。今でこそ、当たり前になってきていますけどね。

もうひとつは、父です。私が小学生になるころに脱サラして会社を経営していたのですが、一番苦労していたのが人モノ金のうち、“人”だったんです。その苦労を傍らでずっと見てきて「人材業界にいこう」と決めました。

松村:その後の森本さんの活躍は、様々なところで耳にしてます!リクルート時代からどういう経緯で、副業・独立へと道を進めていったのでしょうか。

森本:次男の出産後、マネジメントで復職しようと思ったら、夫が月曜日から金曜日まで不在になるという出張族の仕事になってしまいました。また、そのときに長男が小1。「小1の壁」もある中、再度マネジメントで戻るのではなく、自己完結で仕事ができるコンサルタント(営業)として復職しようと、パラダイムシフトしました。しかし、マネジメント職ができないできないことでパッションを持て余してしまい…。そんなときに、講演会や執筆、外部コンサル業など、個人の話をいただけるようになりました。2012〜2014年あたりですね。

松村:なるほど。それを副業として受けることになったんですね。

森本:そうですね。だから本業先に副業申請をして仕事を受けていました。リクルートは昔から副業を許容してくれていましたので。その後、法人として取引したいという企業が増えたため、会社員をしながら株式会社morichを立ち上げました。嬉しいことにお仕事はたくさんいただいたのですが労務管理上の問題で受けられる量に制約が出てしまって。結果的に、2017年にリクルートを退職し、morichに専念する決断をしました。

副業するには、本業でパフォーマンスを発揮することが大前提

松村:企業の副業解禁により、森本さんのように正社員をしながら副業をしたいという人も増えてきています。森本さんの経験を踏まえ、副業はどういう人に向いていると思いますか?

森本: 前提として、本業でしっかりパフォーマンスを出していること。本業が中途半端なまま副業していると、当然本業先の上司や部下から不満を言われますよね。そうすると、余計なプレッシャーを感じてメンタリティのバランスを崩してしまいます。

正々堂々と副業をするためにも、目の前に課された本業のミッションをしっかりこなすというのは絶対条件です。

松村:そうですね、同感です。僕にもよく副業をしたい人という相談が来ますが、紹介できる案件がないケースも少なくないんですよね。その理由の一つが、スキル不足です。まずは本業に注力し、言語化できるスキルを身に着けることをお勧めしています。

森本:私がよく言っているのは、いきなり副業するのではなく、そのきっかけとなるサードプレイスを作っていくこと。例えば、勉強会や学校、イベントなどいろいろなコミュニティで自分の中の知見を蓄積したり、FacebookやTwitterなどのSNSで発信したりしていくうちに、自分の存在価値を発揮できる場所を見つけられるといいですね。

あと、副業をするならキャリア分析をしっかりしておいたほうがいいです。副業は選択肢を増やすことだと思っています。労働人口が減少し、人間がAIに仕事を取って代わられる可能性があると言われていますよね。たしかに、私たちが想像している以上に、ものすごいスピードでAIが進化しています。そんな時代だからこそ、自分にできることをいくつも持っておかないと自分の存在価値を発揮できなくなります。そういう意味でも副業を勧めたいと思っています。

松村:なるほど、複数のスキルを持つためのキャリアを考え、逆算的に副業を行うということですね。

大企業こそ、客観的な意見を言ってくれる副業社員が必要

松村:副業を認めている会社は増えてきたのですが、副業社員を受け入れる会社っていうのはまだまだ少ないのが現状です。森本さんは、副業社員を企業側が活用するメリットをどう考えますか?

森本:社内の人だけだと、直接的な利害関係があり、本質的な意見や議論が難しくなってしまうことがありますよね。でも副業社員が入ることで、客観的に「これなんかおかしくない?」みたいに指摘してもらえることがあると思います。

松村:社内で無意識にできたルールや、常識にとらわれない発想が出てきますよね。

森本:ユーザー視点だったり、新しい発想だったりも提案してもらえます。特に、大企業ではそういう人材が必要です。

松村:おっしゃる通りだと思います。副業社員は企業規模や事業フェーズ、事業課題によって全然別の用途があり、ベンチャー企業だけでなく大企業にもたくさんのメリットがあります。しかし、そのニーズの多くは潜在化しているんですよね。

森本:企業に、副業社員の活用を一般化させるには、一人目にどういう人を採用するかが大事になってきますよね。

松村:そうですね。シューマツワーカーは、一人目にいい人を採用して成功体験を提供することを、とても重要視しています。「採ってみたものの、あんまりうまくワークしなかったら副業社員はもういいや」みたいになると、もったいないですしね。

森本:本当にその通りですね。ただ、企業との相性もありますし、最初のそこの見極めはなかなか難しいとこがありますよね。

松村:シューマツワーカーはこれまで約250社以上の企業に副業社員を紹介してきました。どういう条件がそろえば企業と副業社員がうまくワークするかのパターンがようやく見えてきたところです。その知見をどんどん世の中に発信していきたいと思っています。

将来、転職市場のように副業市場も活発化していく

松村:最後に、副業社員市場は今後どのように変化していくと思いますか?

森本:特効薬のようなウルトラCな手法があって、「これをやったら一気に市場が変わります!」なんてことはないと思います。終身雇用が当たり前だった時代から、転職市場も一気に広まったのではなく、少しずつ少しずつ浸透していきましたから。

私がリクルートへ入社したとき、転職を紹介する人材エージェント会社は100社もありませんでした。有名なところも5〜6社ほどでしたから。でも、いまは2万社のマーケットになっています。

松村:そんなにあるんですね!

森本:セブンイレブンと同いくらいの数ですね。人材紹介免許を取得する企業は毎月100社以上も増えてるんです。

昨今、人生100年時代と叫ばれています。キャリアにおいて、自信のスキルを意識する人は増えていると思います。そうなれば、副業という働き方がどんどん当たり前な時代になっていくと思いますよ。

松村:ありがとうございます!森本さんと話せてすごく勉強になりましたし、楽しかったです。またよろしくお願いいたします!

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