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採用チャネルの多様化が成功のヒント|正社員・副業・業務委託を組み合わせた最適な人材戦略

「求人票を出しても応募が来ない」
「エージェントに頼んでも思うような人材が見つからない」
「採用できても、すぐに辞めてしまう」

こうした採用の悩みが年々深刻になっている背景には、日本の労働市場における構造的な変化があります。帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足倒産は427件となり、3年連続で過去最多を更新しました。従業員10人未満の小規模企業が全体の77%を占めており、「たった一人が辞めただけで事業が回らなくなる」という現実が、多くの中小企業・スタートアップに迫っています(*1)。

*1 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260108-laborshortage-br2025/

こうした状況を打開するカギが、「採用チャネルの多様化」です。正社員採用という一本足打法から脱却し、副業・業務委託人材も組み合わせた複数の人材調達チャネルを持つことで、変化の激しい事業環境にも柔軟に対応できる組織をつくることができます。

この記事では、採用チャネルを多様化することの意義と、正社員・副業・業務委託それぞれの特性を踏まえた組み合わせ方の実践ステップをご紹介します。

目次[非表示]

  1. なぜ「正社員採用一本」では限界が来ているのか
    1. 問題① 採用競争がますます激化している
    2. 問題② コストと時間がかかりすぎる
    3. 問題③ ミスマッチによる早期離職のリスク
  2. 採用チャネルを多様化するとはどういうことか
    1. チャネル① 副業人材の受け入れ
    2. チャネル② 業務委託人材の活用
  3. 正社員・副業・業務委託、それぞれの強みと使いどころ
    1. 正社員採用の強みと使いどころ
    2. 副業人材の強みと使いどころ
    3. 業務委託の強みと使いどころ
  4. 3つのチャネルを組み合わせた人材戦略の設計ステップ
    1. ステップ① 自社の人材ニーズを「役割別」に分解する
    2. ステップ② 各チャネルの採用・受け入れ基盤を整える
    3. ステップ③ 小さなプロジェクトから副業・業務委託を試す
    4. ステップ④ 副業・業務委託を「正社員採用のパイプライン」として活用する
  5. 多様なチャネルを持つことが、採用の「競争力」になる

なぜ「正社員採用一本」では限界が来ているのか

多くの企業がこれまで取ってきた採用戦略は、「正社員を採用し、育成し、定着させる」というシンプルなモデルでした。しかしこのモデルは今、複数の構造的な問題によって機能不全を起こし始めています。

問題① 採用競争がますます激化している

ある調査によると、2025年上半期の中途採用実施理由の1位は「即戦力の補充」(*2)でした。多くの企業が同じ目的で同じ人材プールにアプローチしているため、優秀な人材の争奪戦が激化しています。特にIT・通信・インターネット業界では、採用競争の激しさが際立っています。

*2 株式会社マイナビ「中途採用実態調査2025年版」 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250930_101865/

問題② コストと時間がかかりすぎる

中途採用では人材紹介会社への成功報酬だけで年収の30〜35%程度がかかるのが一般的です。さらに、採用から入社・戦力化まで数カ月〜半年以上を要することも珍しくありません。急いで事業を進めなければならないスタートアップや、リソースが限られる中小企業にとって、このコストと時間の負担は非常に重いものです。

問題③ ミスマッチによる早期離職のリスク

書類選考と数回の面接だけで「この人なら大丈夫」と判断せざるを得ない正社員採用では、入社後のミスマッチが起きやすい構造的な問題があります。スキルや経験は合っていても、カルチャーが合わなかったり、期待する働き方が異なったりするケースは後を絶ちません。早期離職が発生すると、採用にかけたコストがすべて水の泡になるだけでなく、残されたメンバーへの負担や組織全体のモチベーション低下にもつながります。

これらの問題を一度に解決しようとするのではなく、「正社員採用だけに頼らない人材調達の仕組み」を構築することが、今の採用環境では不可欠になっています。

採用チャネルを多様化するとはどういうことか

採用チャネルの多様化とは、求人広告やエージェントなどの採用手法を増やすことだけではありません。より本質的な意味では、「人材を正社員として雇用すること」以外の選択肢を組織に組み込むことを指します。

具体的には、正社員採用に加えて、以下の2つのチャネルを戦略的に活用することが重要です。

チャネル① 副業人材の受け入れ

副業人材とは、別の企業に勤めながら週数時間〜数日を自社のプロジェクトに充ててくれる人材です。エンジニア、マーケター、デザイナー、営業、バックオフィスなど、多様な職種で活用が広がっています。

ある調査によると、社外の兼業・副業人材を「受け入れている」と回答した企業の割合は53.7%に達しており、2022年調査から5.1ポイント増加しています。副業人材の受け入れは、もはや先進的な取り組みではなく、多くの企業にとってスタンダードな選択肢になりつつあります(*3)。

*3 株式会社リクルート「兼業・副業に関する動向調査2024」(JBRCジョブズリサーチセンター掲載) https://jbrc.recruit.co.jp/data/data20250529_3778.html

チャネル② 業務委託人材の活用

業務委託は、特定の業務や成果物に対して報酬を支払う契約形態です。フリーランスや個人事業主として活動するプロフェッショナルに、専門的な業務を担ってもらう形式です。副業と異なり、特定の企業に雇用されていない独立した働き方です。

ある調査によると、外部プロ人材を活用したことがある経営者・管理職の割合は21.4%に達し、前年から3.2ポイント増加しました。活用のきっかけとして最も多かった理由は「社内にないスキル・専門性が必要な業務が発生した」(46.3%)であり、自社だけでは補えない専門性を外部から調達する需要が着実に高まっています(*4)。

*4 株式会社みらいワークス「2025年 大企業への外部プロ人材(フリーランス・副業)活用実態調査」 https://mirai-works.co.jp/mwri/report/report-humanresources/5092/

正社員・副業・業務委託、それぞれの強みと使いどころ

3つのチャネルにはそれぞれ異なる特性があり、目的や状況に応じた使い分けが重要です。

正社員採用の強みと使いどころ

正社員は、組織の中核を担い、長期的に事業を成長させていく人材として不可欠な存在です。企業文化を体現し、チームをまとめ、難題が生じたときに組織の内側から解決していく力は、正社員ならではのものです。

使いどころとしては、事業の根幹に関わる業務・マネジメント職・顧客との長期的な関係構築が必要なポジションなどに向いています。一方、採用コストが高く、ミスマッチのリスクも大きいため、「本当に正社員でなければならないか」を常に問い直すことも大切です。

副業人材の強みと使いどころ

副業人材の最大の強みは、「転職市場に出てこない優秀な人材と接点を持てる」ことです。現在の職場に満足しながらも新しい挑戦を求めている大手企業やスタートアップのプロフェッショナルが、副業という形で関わってくれることがあります。

使いどころとしては、新規プロジェクトの立ち上げ・特定のスキルが短期間だけ必要な業務・正社員採用の前段階として相互理解を深める「お試し期間」などに適しています。また、副業での協働を経て正社員として入社してもらうケースも増えており、採用ミスマッチを減らす有力な手段にもなります。

業務委託の強みと使いどころ

業務委託は、特定の専門スキルを必要なときだけ調達できる柔軟性が最大の強みです。フルタイムの正社員を採用するほどではないが、専門スキルが必要な領域や、プロジェクト完結型の業務に特に向いています。

使いどころとしては、Webサイト制作・マーケティング施策の設計・会計・法務などの専門領域・新規事業の初期検証フェーズなどが代表的です。契約期間や業務範囲を柔軟に設定できるため、事業の成長フェーズに合わせてスケールアップ・ダウンしやすい点も大きなメリットです。

3つのチャネルを組み合わせた人材戦略の設計ステップ

それでは、実際に採用チャネルを多様化するにはどのように進めればよいでしょうか。4つのステップで整理します。

ステップ① 自社の人材ニーズを「役割別」に分解する

まず、現在自社が必要としている人材を「役割」ごとに整理します。「長期的に組織を担う中核人材」「特定プロジェクトで専門スキルが必要な人材」「繁忙期や業務の波に対応するための即戦力」など、役割の性質によって適切な雇用形態は異なります。

この分解ができると、「どのポジションは正社員として採用し、どの業務は副業・業務委託で対応するか」という判断が明確になります。なんとなく「とりあえず正社員を採りたい」という発想から脱却できるのも、この整理の大きな効果です。

ステップ② 各チャネルの採用・受け入れ基盤を整える

3つのチャネルを並行して活用するためには、それぞれに対応した受け入れ基盤が必要です。

正社員採用では採用プロセスの設計と選考基準の明確化、副業・業務委託では秘密保持契約(NDA)の整備・業務範囲と期待成果の定義・コミュニケーション頻度の設定などが必要になります。

前述の「兼業・副業に関する動向調査2024」(*3)では、副業・兼業人材の受け入れが事業推進上プラスの効果があったと回答した企業において、特に差が顕著だった取り組みとして「業務内容・期待成果を明確にしている」が挙げられています。受け入れ体制を整えることが、活用効果を最大化する最初のカギです。

ステップ③ 小さなプロジェクトから副業・業務委託を試す

採用チャネルの多様化に慣れていない企業が最初から大きな業務を外部人材に任せようとすると、うまくいかないケースが多くあります。まずは3カ月程度の特定プロジェクトを一人の副業人材に依頼するところから始めるのがおすすめです。

この期間中に、スキルレベル・コミュニケーションスタイル・組織文化との相性を実際の業務を通じて確認できます。小さく始めることで「外部人材をどう活かすか」という組織としてのノウハウが蓄積されていき、次第に複数の外部人材を組み合わせた大きなプロジェクトにも対応できるようになります。

ステップ④ 副業・業務委託を「正社員採用のパイプライン」として活用する

採用チャネルの多様化における最も戦略的な活用方法が、副業・業務委託期間を「正社員採用の前段階」として位置づけることです。実際に一緒に働く期間を経ることで、お互いのスキルやカルチャーフィットを十分に確認した上で、正式な雇用へと移行することができます。

こうした段階的な関係構築は広く実践されはじめており、面接だけでは分からない「本当の相性」を確認してから採用判断ができるため、採用ミスマッチの大幅な削減と定着率の向上が期待できます。

多様なチャネルを持つことが、採用の「競争力」になる

採用チャネルの多様化は、単に「人材を調達する手段を増やす」だけではありません。その本質は、組織としての採用力そのものを高めることにあります。

副業・業務委託人材の受け入れ経験が豊富な企業は、外部の優秀な人材コミュニティの中で「一緒に働きやすい企業」として認知されていきます。良い評判が口コミで広がることで、優秀な副業人材が集まりやすくなり、そこから正社員候補のパイプラインも自然と広がっていきます

一方で、「正社員しか受け入れない企業」は、転職市場に出てこない優秀な潜在層にアプローチできず、採用の選択肢が狭まり続けるという悪循環に陥りがちです。

人手不足が深刻化し、採用競争が激化する今だからこそ、複数の採用チャネルを戦略的に組み合わせる柔軟な人材戦略への転換が、企業の成長を左右する重要なカギとなっています。


正社員・副業・業務委託という3つの人材調達チャネルの使い所はそれぞれ。これらを戦略的に組み合わせることで、自社の人材ニーズを状況に応じて柔軟に満たしていきましょう。

まずは「今、自社が本当に必要としている人材は何か」を役割ごとに整理し、正社員でなくても対応できる業務がないかを見直すことから始めてみてください。そして、小さなプロジェクトで副業・業務委託人材との協働を試し、受け入れのノウハウを少しずつ積み上げていきましょう。

採用の入口を広げることが、結果として組織の採用競争力を高め、優秀な人材が集まり続ける好循環を生み出していきます。その一歩を、ぜひ今日から踏み出してみてください。


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