
プロジェクト型採用のススメ|期間限定の業務に副業人材を活用するメリットと進め方
「新規事業の立ち上げに、専門知識を持った人材がほしい」
「でも、正社員として通年雇用するほどの業務量ではない」
このようなジレンマを抱えたことがある経営者や事業責任者の方は、多いのではないでしょうか。
新商品のマーケティング施策、社内システムの刷新、新規事業の立ち上げ支援など、企業には「期間が決まっている」「専門性が求められる」業務が数多く存在します。こうした業務に対して、正社員採用でも外注でもない第三の選択肢として注目されているのが「プロジェクト型採用」です。この記事では、プロジェクト型採用の考え方と、副業人材を活用するメリット、そして実際の進め方について解説してまいります。
プロジェクト型採用とは
プロジェクト型採用とは、期間や成果物が明確な特定のプロジェクトに対して、副業人材や業務委託人材を迎え入れる採用の形です。経済産業省中小企業庁の資料でも、副業人材の活用方法の一つとして「プロジェクト型」が紹介されており(*1)、専門知識やノウハウ、豊富な経験を持つ人材に、社内システムの開発や新商品のマーケティング活動、新規事業分野への進出サポートなどに関わってもらう活用方法として位置づけられています。
*1 経済産業省中小企業庁「事例から学ぶ!『副業人材』」
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/20187/
正社員採用は、基本的に「期間の定めのない雇用」を前提としています。そのため、期間限定のプロジェクトのためだけに正社員を採用するのは、コストの面でも組織運営の面でもハードルが高いのが実情です。かといって、専門性の高い業務を外部にすべて丸投げしてしまうと、社内にノウハウが蓄積されず、プロジェクト終了後に同じ課題が再発してしまうこともあります。
プロジェクト型採用は、こうした課題の間を埋める選択肢です。プロジェクトの期間中、副業人材に社内のメンバーと一緒に業務を進めてもらうことで、成果を出しながら同時に社内にノウハウを残すことができます。
なぜ今、プロジェクト型採用が注目されているのか
背景① 副業・フリーランス市場の拡大
ある調査によると、2024年の日本のフリーランス人口は1,303万人、経済規模は20兆3,200億円に達しており、10年前と比較して人口・経済規模ともに約40%の成長を遂げています(*2)。
*2 ランサーズ株式会社「フリーランス実態調査 2024年」https://www.lancers.co.jp/news/pr/24055/
本業を持ちながら副業として専門性を活かす人材や、独立してプロジェクト単位で複数の企業に関わる人材が着実に増えており、企業が期間限定の業務を任せられる人材の選択肢は年々広がっています。
背景② 活用企業の満足度の高さ
別の調査によると、副業・フリーランス人材を活用したことがある企業は3割未満にとどまる一方で、実際に活用した企業のうち約8割が「満足」と回答しています(*3)。
*3 パーソルキャリア株式会社「『副業・フリーランス人材白書2025』を公開 活用経験のある企業は3割未満にとどまるも、約8割が満足と回答」https://www.persol-career.co.jp/newsroom/news/service/2025/20250522_1845/
この結果からは、副業人材の活用はまだ多くの企業にとって「未知の選択肢」でありながら、実際にやってみると高い満足度が得られる施策であることがうかがえます。プロジェクト型採用は、そうした「まずは試してみたい」企業にとって、取り入れやすい活用方法だといえるでしょう。
プロジェクト型採用のメリット
メリット① 専門性の高い人材にピンポイントで関わってもらえる
正社員採用では、応募者の中から候補を絞り込む必要がありますが、プロジェクト型であれば、そのプロジェクトに必要な専門性を持つ人材に、期間を区切ってピンポイントで参画してもらうことができます。マーケティング戦略の立案、システム開発、財務・法務など、社内に専門人材がいない領域でも、必要なタイミングで必要な専門性を調達できるのが大きな強みです。
メリット② 採用コストと固定費を抑えられる
正社員採用には、求人広告費や人材紹介手数料に加えて、入社後の給与や社会保険料など、継続的な固定費が発生します。プロジェクト型採用であれば、業務委託契約として、プロジェクトの期間や成果に応じた報酬設計が可能になるため、コストを事業の実態に合わせてコントロールしやすくなります。
メリット③ 転職市場に現れない人材と出会える
プロジェクト型で関わってくれる副業人材の多くは、現在の職場に満足しながらも、新しい挑戦や専門性を活かせる機会を求めている層です。こうした人材は、通常の転職活動を行っていないため、求人媒体だけでは出会うことができません。プロジェクト単位での関わりであれば、「転職は考えていないが、面白いプロジェクトなら参加したい」という潜在層にもアプローチでき、企業の人材獲得の選択肢が広がります。
メリット④ 正社員採用に向けた見極めにもなる
プロジェクトを通じて一緒に働く中で、スキルだけでなく、コミュニケーションの取り方や仕事への向き合い方など、面接だけでは分からない部分を実際に確認することができます。プロジェクトの成果や働きぶりを見た上で、双方が合意すれば、正社員としての採用に発展させることも可能です。プロジェクト型採用は、いわば「お試し期間」としての役割も果たしてくれます。
プロジェクト型採用の進め方
ステップ① 業務を「プロジェクト」として切り出す
まずは、依頼したい業務を洗い出し、期間と成果物が明確な単位に切り分けます。「なんとなく手伝ってほしい」という曖昧な依頼では、副業人材側も動きづらくなってしまいます。「3ヶ月間で新規顧客獲得のためのマーケティング施策を立案・実行する」など、期間と到達点を具体的に設定することが最初のポイントです。
ステップ② 求める人物像とスキルを言語化する
プロジェクトに必要なスキルや経験、そして社内メンバーと円滑に連携できるコミュニケーション力など、求める人物像を具体的に整理します。特にプロジェクト型は、限られた期間で成果を出す必要があるため、即戦力となるスキルセットを明確にしておくことが重要です。
ステップ③ 受け入れ体制を整える
社内の誰が窓口となり、どのメンバーと連携してもらうのか、業務に必要な情報やツールへのアクセス権をどう用意するのかなど、受け入れ体制を事前に整えておきます。プロジェクト開始後に体制が定まっていないと、副業人材が持つ専門性を十分に発揮してもらえなくなってしまいます。
ステップ④ キックオフで期待値をすり合わせる
プロジェクト開始時には、目的やゴール、スケジュール、報告の頻度や方法について、しっかりとすり合わせを行います。ここでの期待値のズレが、後々のミスマッチにつながることが多いため、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
ステップ⑤ 定期的な振り返りとフィードバックを行う
プロジェクトの進行中は、定期的な振り返りの場を設け、進捗の確認とフィードバックを行います。副業人材は社外の視点を持っているからこそ、社内では気づきにくい課題や改善点を提示してくれることも少なくありません。そうした意見を積極的に取り入れる姿勢も、プロジェクトを成功させる上で大切です。
プロジェクト型採用を成功させるためのポイント
ポイント① 「小さく始める」ことを意識する
初めてプロジェクト型採用に取り組む場合は、いきなり大規模なプロジェクトを任せるのではなく、まずは3ヶ月程度の小さなプロジェクトから始めてみることをおすすめします。小さな成功体験を積み重ねることで、社内の理解も進み、その後の活用範囲を広げやすくなります。
ポイント② 社内メンバーとの連携を大切にする
プロジェクト型採用は、副業人材だけで完結するものではありません。社内メンバーとの円滑な連携があってこそ、専門性を最大限に活かすことができます。定例ミーティングへの参加やチャットツールでの日常的なコミュニケーションなど、社内の一員として関わってもらえるような環境づくりを意識しましょう。
ポイント③ プロジェクト終了後の関係性も見据える
プロジェクトが終了した後も、継続的なアドバイザーとして関わってもらったり、次のプロジェクトで再び声をかけたりと、長期的な関係を築くことができれば、企業にとって大きな財産になります。プロジェクトの成果だけでなく、その後の関係性まで見据えて採用に取り組むことが、プロジェクト型採用の価値を最大化するポイントです。
まとめ
プロジェクト型採用は、期間や成果物が明確な業務に対して、副業人材や業務委託人材の専門性をピンポイントで活用できる、正社員採用とも外注とも異なる第三の選択肢です。副業・フリーランス市場が拡大し、活用企業の満足度も高いことが調査からも見えてきています。
まずは小さなプロジェクトから、社内の受け入れ体制を整えながら取り組んでみることで、専門人材との新しい関わり方を実感できるはずです。ぜひ自社の事業課題に合わせて、プロジェクト型採用の導入を検討してみてください。



